農業生態系ネットワークのデジタル化に成功ー理研などのグループ2020年6月15日
理化学研究所バイオリソース研究センター植物ー微生物共生研究開発チームの市橋泰範チームリーダーなどを中心とする共同研究グループは、農業生態系における植物ー微生物ー土壌の複雑なネットワークのデジタル化に成功した。これまで熟練農家の経験として伝承されてきた高度な作物生産技術を、科学的に可視化できるようにした。
研究成果では、化学肥料に頼らず有機態窒素を活用することで、持続可能な作物生産が可能であることを示している。環境共存型の新しい農業に向け、持続的な作物生産の実現に貢献することが期待できる。
共同研究グループは、農業現場でのマルチオミクス解析により農業生態系のデジタル化に着手。この結果、農業生態系は作物が示す特定の形質(収量や品質など)と、特定の微生物種や土壌成分で構成された複数のモジュールにより、ネットワークを形成していることが明らかになった。
また、有機農法の一つである太陽熱処理により植物根圏に特徴的な細菌叢が形成され、土壌中に蓄積する有機態窒素が作物の生育促進に関与していることも確認した。さらに、同定した土壌有機態窒素のうちアラニンとコリンが、窒素源および生理活性物質として作物生育を促進することを証明した。
共同研究グループは、千葉県八街市の農家が実践している有機農法に着目。農家が実施している太陽熱処理で、ほ場での滅菌や雑草防除とともに作物の生育促進効果が認められたが、要因については未解明だった。同じほ場内において化学肥料や堆肥を施肥し、太陽熱処理有無の4試験区を設置しコマツナを栽培した。
その結果、太陽熱処理は土壌設置の電位センサーから土壌物理環境を大きく変化させることが分かり、化学肥料や堆肥を使わずコマツナの収量をおよそ1.7倍に増加させることが明らかになった。
同プロジェクトでは、マルチオミクス解析による農業生態系のデジタル化を行い、農家独自の技として伝承されていた有用な作物生産技術などを科学的に可視化することに成功。今後の農学分野における解析アプローチの主流となることが期待できる。
重要な記事
最新の記事
-
(408)技術と文化・伝統の引継ぎ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月3日
-
令和6年秋の叙勲 加倉井豊邦元全厚連会長ら77人が受章(農水省関係)2024年11月3日
-
シンとんぼ(116) -改正食料・農業・農村基本法(2)-2024年11月2日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (33) 【防除学習帖】第272回2024年11月2日
-
農薬の正しい使い方(6)【今さら聞けない営農情報】第272回2024年11月2日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(2)高米価でもリタイア?2024年11月1日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(3)ギリギリ需給でいいか?2024年11月1日
-
【特殊報】「サツマイモ炭腐病」県内のサツマイモに初めて確認 鳥取県2024年11月1日
-
食と農の情報 若年層にはSNSや動画発信が有効 内閣府の世論調査で明らかに2024年11月1日
-
【注意報】野菜、花き類にチョウ目害虫 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年11月1日
-
だし・かつお節需要が高まる年末年始に向けて「徳用シリーズ」売れ筋2品を10%増量 マルトモ2024年11月1日
-
JA貯金 残高108兆2954億円 農林中金2024年11月1日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】 福島・JA会津よつば 産地強化で活路探る 中山間地域で〝生きる〟2024年11月1日
-
鳥インフル 米サウスカロライナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフルエンザ 「危機感共有して発生予防を」小里農相2024年11月1日
-
兵庫県ご当地カレー&「午後の紅茶」キャンペーン実施 JAタウン2024年11月1日
-
「JA共済安全運転アプリ」提供開始 スマホではじめる安全運転2024年11月1日
-
子どもたちが丹精込めて作った「優結米」熊本「みのる食堂」で提供 JA全農2024年11月1日
-
たまごのゴールデンウィーク「幻の卵屋さん」各所で出店 日本たまごかけごはん研究所2024年11月1日