2020農業技術10大ニュース発表 AIで病害診断、スマホで土壌分析など2020年12月24日
農林水産省は12月23日、2020年農業技術10大ニュースを選定した。この1年間に新聞記事となった民間企業や大学、公的研究機関が発表した成果から農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など29社加盟)の加盟記者による投票で選んだ。
2020年農業技術10大ニュースは以下のとおり。
【TOPIC1】判断の根拠を説明できるAI
農研機構は「判断の根拠を説明できるAI」を開発した。これをジャガイモ、トマト、ピーマンの葉画像を使った病害診断に適用したところ病気葉と健康葉を95%以上の高精度で診断することができた。生産者も納得して防除することができるだけでなく、農業分野以外への活用も期待される。
【TOPIC2】スマホを使って土壌分析
JA全農は土壌分析用の試験紙「みどりくん」と簡易測色ツールで発色程度を判定し、結果をスマホに送信する仕組みを開発した。これまで目視によって判定していたが、個人差なく誰でも土壌分析が実施でき、適切な施肥管理が可能となる。
【TOPIC3】赤色LEDでアザミウマ防除
大阪府立環境農林水産総合研究所、農研機構、静岡県農林技術研究所、(株)光波は、赤色発光ダイオード(LED)を植物に照射することでミナミキイロアザミウマを防除する技術を確立。施設栽培のナス、キュウリ、メロンで防除効果を実証した。化学農薬の使用削減につながる新手法として期待される。
【TOPIC4】農作業事故事例検索システム
農研機構は農作業事故の事例とその原因、対策をウェブ上で閲覧できるシステムを開発した。農作業現場に潜在する危険な箇所や対策などの情報を得ることができる。
【TOPIC5】田んぼダムで豪雨対策
農研機構は豪雨時の洪水対策として水田を積極的に活用するため、水稲の減収を抑えられる水深とその継続期間の目安を明らかにした。同時に安価で手軽に設置できる水位管理器具を開発した。
【TOPIC6】消石灰の消毒効果を見える化
室蘭工大は(株)コア、ティ・イー・シー(株)、宮崎県、北海道白糠町と消石灰の消毒効果を判別する可視化剤を開発した。消石灰は大気や雨水中の二酸化炭素と反応して消毒効果が低下してしまう。可視化剤を使うことで劣化状態を定期的に把握できる。
【TOPIC7】イネの茎伸長で相反する2遺伝子を発見
名古屋大学を中心とした共同研究チームは、イネの茎伸長に関する相反する2つの遺伝子を発見した。アクセル役となる伸長促進効果を持つACE1遺伝子と、ブレーキ役となる抑制効果を持つDEC1遺伝子で、これらの遺伝子による茎伸長の制御メカニズムはイネ科植物に共通している。コムギ、オオムギなどイネ科作物の草丈を人為的に制御する技術への応用が期待される。
【TOPIC8】農業用水路がヒートポンプの熱源に
農研機構はシート状熱交換器を流水中に入れると、土中や静水中にくらべ効率よく採熱できることを解明した。熱交換器を含めた熱利用システム全体の設置コストは、地中から熱を採るための穴を掘る方式とくらべて約25%削減できる。農村地域に広く分布する農業用水路をヒートポンプの熱源として有効利用できる。
【TOPIC9】AIによる温州みかんの糖度予測手法を開発
農研機構は膨大なデータを学習したAIと、前年までに蓄積された糖度データと気象データから温州みかんの当年の糖度を予測する手法を開発した。出荷時の糖度を地区単位で7月ごろから高精度に予測できる。
【TOPIC10】フェーン発生を3日前に予報
水稲が登熟前半の米の肥大期に高温乾燥の強風であるフェーンを浴びると白未熟粒の発生で品質が低下する。農研機構は領域気象モデルを用いた気象予報をもとに3日先までの水稲のフェーン被害を予測するシステムを開発した。現地では水田の水位を保つなど事前の対策が可能となる。九州のほか北陸地方への導入も進行中。
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