微生物でイネもみ枯細菌病を抑制 農研機構2021年3月4日
農研機構は3月3日、イネもみ枯細菌病の発症を抑える微生物をもみ枯細菌病に感染したイネの幼苗から発見したと発表した。この細菌を用いた微生物農薬の開発や環境負荷の低いもみ枯細菌病の防除資材の開発に役立てる。
もみ枯細菌病(左)、各菌をもみに与えた後に播種し、8日後の芽生えの様子(右)
イネもみ枯細菌病は、イネもみ枯細菌病菌の感染で引き起こされるイネの重要病害で、地球温暖化に伴い世界的に発生拡大が危惧されており、国内でも西日本を中心に多発し被害が拡がっている。抵抗性品種が存在せず、現在は殺菌剤の防除が一般的だが、殺菌剤の効かない原因細菌が出現し問題となっていた。また、この病害の原因細菌であるイネもみ枯細菌病菌は、生育途中のイネのもみに感染し穂枯症を引き起こすが、もみに感染しても枯死などの病徴を示さない場合があるため、感染に気づきにくく感染拡大が課題となっていた。
農研機構では、もみ枯細菌病の抵抗性遺伝子の特定や微生物などを使った病害虫防御技術の開発を進めるなかで、この病害の発生を抑える4種の有用微生物として、シュードモナス属細菌3種とステノトロフォモナス属細菌1種を発見した。この細菌をもみ枯細菌病菌と同時にイネに与えることでイネの内生微生物叢が変化し、効果的にもみ枯細菌病による幼苗の枯死を抑えることに成功した。今回の研究成果から、4種の細菌が「善玉菌」として働き、イネに常在する微生物叢微のバランスを変化させることで、もみ枯細菌病の発症を抑えている可能性を示唆している。
今後は微生物農薬の開発や決定的な防除方法のないもみ枯細菌病に対する効果的な防御技術の開発に役立てるとともに、もみ枯細菌病の発症メカニズムの解明に期待がかかる。
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