地球温暖化に適応 イネの生産性25%アップに成功 東京大学2021年5月6日
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの共同研究は、地球温暖化に適応した生産性の高いイネを作り出すことに成功。光合成のCO2固定酵素であるルビスコと、ルビスコの活性化を促進する酵素であるルビスコアクチベースを増強した二重形質転換体イネを新たに作出し、野生型イネと比較して、高温環境における光合成速度を約20%、最終的な植物体重量を約26%向上させることに成功した。
熱安定性の高いアクチベースをイネに導入することによって、高温環境における光合成速度と植物成長の促進に成功(左)
RubiscoとRCAの二重形質転換体イネの植物成長量 25℃および40℃において75日間栽培した後に、地上部の乾燥重量を解析した。RCA:アクチベース、Rubisco:ルビスコ(右)
世界人口が今後も増え続けると予想される中、増大する食料需要に応え、将来にわたって食料を安定供給していくことは、世界的な重要課題。また、作物の生産性を低下させる地球温暖化は、持続可能な食料の安定供給のためには、高温耐性作物の開発は不可欠となっている。
高温による作物の生産性の低下は、光合成システムの障害を通じて起こることが知られており、特に、CO2固定酵素であるリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ・オキシゲナーゼ(通称ルビスコ)の不活性化は、高温環境における光合成能力低下の主な要因となる。しかし、植物には、不活性化したルビスコを再活性化するルビスコアクチベースという酵素も存在。高温条件で植物の光合成能力が低下する要因は、不活化したルビスコがアクチベースによって再活性化されないこと、つまりアクチベースが失活するためであると考えられている。
これまでの研究で、高温環境における光合成能力の改良のために、アクチベースを高発現する形質転換体イネを作成し解析したところ、予想に反して、アクチベース量の高発現に伴ってルビスコ量の特異的な減少が引き起こされた。その結果、光合成能力が低下してしまうことが明らかとなっていした。そこで、矢守准教授らは、遺伝子発現パターンの異なる二つのプロモーターを用いて、ルビスコとアクチベースそれぞれの遺伝子を同時に導入することで、ルビスコ量を減らさずにアクチベース量を増強した二重形質転換体イネを作出できると考えた。
ルビスコ遺伝子の高発現にはrbcSプロモーターを、アクチベース遺伝子の高発現にはcabプロモーターを用いることで、それぞれの発現に干渉しないように考慮。また、一般にC4植物はC3植物に比べて、高温環境でルビスコ活性化状態を高く維持できることが知られているが、これはC4植物のアクチベースがC3植物よりも最適温度が高いためだと考えられている。
そこで、同研究では、C4植物であるトウモロコシ由来のアクチベースとC3植物であるイネ由来のルビスコをイネに導入。作出した形質転換イネから選抜し 、ルビスコ量が減少せずアクチベース量が約2倍増加した二重形質転換体イネを複数系統作出することに成功した。
次に、これらの二重形質転換体を、温和な環境(25℃)と高温環境(40℃)で栽培し、それぞれの栽培環境下における光合成応答と植物成長を解析。屋内型人工気象室で、播種後10週間目まで成長させた植物個体の最上位成熟葉を用いて、25℃と40℃における光合成速度とルビスコ活性化率を測定した。すると二重形質転換体の光合成速度とルビスコ活性化率は、25℃では野生株と同程度だったが、40℃では有意に高い値を示した。また、個体の地上部乾燥重量を測定したところ、二重形質転換体は野生株に比べて26%増加することが分かった。
同研究成果により、ルビスコ量を減らさずにアクチベース量を増やすことで、近未来に予想される温暖化環境において、イネの光合成能力と生産性を向上させることが可能であることが明らかになった。
高温耐性品種と新たな栽培技術により、温暖化に伴って生じる高温や気象変動リスクによる減収と品質低下を回避できれば、経済効果が約900億円程度に上ると試算されている。
今後、近未来の温暖化環境で光合成が抑制されるメカニズムの全貌を解明し、全ての抑制を解除すれば、光合成効率の改善だけでなく植物のバイオマス生産量確保のための技術開発につながる。また、食料増産や地球レベルの大気中CO2濃度の削減への貢献が期待される。
同研究成果は4月28日付でPlant, Cell & Environment誌に掲載された。
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