干ばつでイネの根が貧弱化する仕組みを解明 強いイネ品種開発に期待 農研機構2021年8月19日
農研機構は、干ばつによってイネの根の張りが悪くなる仕組みの一端を解明。世界の代表的なイネ品種について、断続的な干ばつ下における根の形態と、全遺伝子の働きを比較し、干ばつによって根が細くなる原因と考えられる複数の遺伝子を発見した。同成果は、干ばつに対して頑健なイネ品種開発への活用が期待される。
イネは世界で年間8億トン生産される重要な穀物の一つ。日本では主に水田で稲作が行われるが、大渇水が発生すると農業用水の取水制限を受けることがある。世界では、灌漑施設がなく、雨水のみでイネが栽培される天水田や畑でも稲作が行われており、世界の稲作地域の62%(約1億ヘクタール)で、干ばつによる減収が食料安全保障上の大きな問題になっている。
世界のイネ品種の形質情報と全遺伝子発現情報の取得(クリックで拡大)
こうした地域で米を安定生産するには、干ばつに強いイネの開発が不可欠で、干ばつに強い畑作物には、根が太く、根を土中の深くまで伸ばす特徴がある。同研究グループは、世界で初めて深根化に関与する遺伝子を発見し、土壌の深層から水を獲得させることで、干ばつに強いイネの開発に成功した。より干ばつに強いイネを開発するには、深根化に加えて根を太くし、根の量を多くすることが効果的と考えられるが、品種改良に利用できる根の太さに関与する遺伝子はこれまで見つかっていない。
農研機構は世界中の代表的なイネ品種に畑で干ばつ処理を行い、根の形態的な特徴と網羅的な遺伝子発現を解析。「なぜ、イネの根が干ばつ下で貧弱になるのか」を明らかにした。イネの根は干ばつ下で細くなるだけでなく、数が減る。干ばつによって根が貧弱になる品種では、植物ホルモンの一種であるオーキシンに反応する遺伝子群の発現量が増加しており、これらの遺伝子の働きが強くなることで生育阻害が起こると推定。この中から、干ばつによって根が細くなる原因と考えられる遺伝子を発見した。これらの遺伝子を改良し、干ばつ下でも根が細くならないようにすることで、今後より干ばつに強いイネの開発が可能になると期待される。
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