国際連携で巨大なタマネギゲノム解読 山口大、東北大など研究グループ2021年8月23日
山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の執行正義教授のグループは、東北大学大学院生命科学研究科の佐藤修正教授、かずさDNA研究所ゲノム情報解析施設の平川英樹施設長、農研機構の藤戸聡史研究員(野菜花き研究部門)、塚崎光グループ長(東北農業研究センター)、東京農業大学の峯洋子教授、田中啓介助教等との共同研究で、シャロットとタマネギの倍加半数体間のF2分離集団等を用いて次世代シーケンサによる発現遺伝子の網羅的解析を実施。その結果、約4400 個の発現遺伝子を8本の染色体に対応した遺伝地図上に整列化させることに成功した。
タマネギ高密度遺伝地図
農業分野では、栽培品種の育種目標が多様化する中で、ゲノム配列情報に基づく育種技術の開発が求められている。
ヒトのゲノムは約30億の塩基からなっているが、タマネギは、ヒトの5 倍以上もの約160 億塩基対からなっている。祖先種や近縁種を含むタマネギを人類が栽培してきた歴史は数千年以上と長く、現在まで世界中の様々な地域で栄養豊富な健康食材として利用され続けている。しかし、ゲノムサイズの巨大さから、分子生物学手法に基づく大規模な研究はなされておらず、タマネギのもつ魅力的な形質とゲノム情報との関連は未だ不十分だ。
ゲノムのシークエンス解析では、大量のゲノム配列を細切れにし、手本となる基準ゲノムと照らし合わせて解読する場合が多い。一方、基準ゲノムのないタマネギを基準ゲノムを必要としない解析手法であるde novo Genome Assembly(参照配列を必要としない配列貼り合わせ)で解読しても、ゲノムの巨大さと複雑さゆえ塩基配列情報の並び順を決定することは難しい。そこで、研究グループは発現遺伝子に関する配列情報を集めることに注力し、異種染色体添加系統を用いて約2万5000 種類の発現遺伝子の座乗染色体を決定。さらに倍加半数体系統の特性を活用し、それらの並び方を正確に反映した高密度遺伝子地図情報を整備することに世界で初めて成功した。さらに、この遺伝地図情報が手本として一役買い、2021年に日本(山口大学を代表とするグループ)とオランダの共同研究グループがタマネギの全ゲノム解読に世界で初めて成功した。
同研究により、タマネギの全ゲノム配列が高精度に明らかになったことで、高等植物におけるゲノム巨大化のメカニズム解明を進めやすくなる。また、整備された配列解析情報に基づく育種技術の開発が期待される。
同研究成果は、6月26日付で国際科学雑誌「BMC Genomics」電子版に掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日