ナシにサクセスキクイムシ 県内で初確認 茨城県2021年11月26日
茨城県病害虫防除所は、ナシにサクセスキクイムシの発生を県内で初めて確認。これを受け、11月24日に病害虫発生予察特殊報第2号を発令した。
サクセスキクイムシの成虫(写真提供:茨城県病害虫防除所)
8月に県南地域のナシ園で収穫された「豊水」の果実表面に直径1ミリ程度の穿孔を確認され、果実内部には体長2ミリ程度のキクイムシ類の一種の成虫と思われる昆虫が認められた。「豊水」以降に収穫期を迎える他の中生品種や晩生品種については、同様の被害果実は確認されなかった。
この成虫について、横浜植物防疫所に同定を依頼したところ、サクセスキクイムシであることが判明。同種によるナシ果実への食入加害を確認したのは、茨城県では初めて。国内では2005年に千葉県で確認されて以降、栃木県、愛知県、岐阜県、新潟県、愛媛県、宮城県、高知県、埼玉県で確認され、特殊報が発表されている。
成虫の体長は約2ミリ、細長い円筒形で、光沢のある黒褐色をしており、年1~2回発生する。成虫で樹内越冬し、翌年4~5月頃脱出して、衰弱している樹や倒木に深く穿孔し、孔道を作る。孔道の直径は約0.7ミリで食入後に細かい木屑を排出。同種の寄主範囲は広く、各種針葉樹、広葉樹に寄生する。果樹類では、ナシの他に、リンゴ、モモ、カキ、クリなどの枝幹部への穿孔被害が確認されている。
被害の特徴としては、成虫によるナシ果実への穿孔から被害果が生じる。被害果は、日数の経過とともにその穿孔部分を中心に腐敗する。
腐敗果の特徴は、果実吸蛾類の被害によく似ている。キクイムシの場合は穿孔穴の大きさが直径約1ミリと吸蛾類に比べてやや大きく、穴を中心に一様に褐変する。これに対し、吸蛾類の場合は、吸汁部分の穴がより小さく、中心部と周縁部にわずかな濃淡がみられる。また、断面を観察すると、キクイムシの場合は穿孔部分以外に空間がみられないが、吸蛾類の場合はスポンジ状の空間がみられる。果実被害は、袋掛け後にも発生し、特に過熟果で多い傾向にある。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇果実は過熟にならないよう適期収穫に努める。
〇適正な肥培管理により樹勢の維持、回復に努める。穿孔が多く衰弱の激しい樹は主幹部が残らないように伐採し、剪定した枝幹等も含めて適正に処分する。
〇被害果を確認した場合は、周辺に枝幹の穿孔被害も発生している可能性が高いので、木屑を目印に観察する。枝幹被害を確認した場合は、成虫活動時期の4~5月にトラサイドA乳剤 200 倍液を樹幹部に十分に散布する。なお、薬液が新葉や花など軟らかい組織に付着すると、薬害を生じる事があるため注意する。
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