トマトキバガ(チョウ目キバガ科) 県内で確認 宮崎県2021年12月17日
宮崎県病害虫防除・肥料検査センターは、トマトキバガ(チョウ目キバガ科)の発生を県内で確認。これを受け、12月14日に病害虫発生予察特殊報第3号を発令した。
幼虫の食害による被害果(写真提供:宮崎県病害虫防除・肥料検査センター)
12月に県内の一部の施設栽培トマトほ場で、葉の薄皮化及び白~褐変症状と果実の穿孔症状が発生。症状が発生した葉や果実において、乳白色~緑白色でやや桃色がかったイモムシ型の幼虫の寄生が確認された。また、当該ほ場では、暗色で細長い小さなガの成虫が確認され、トマトキバガであることが疑われたため、上記の幼虫及び成虫を採集し、農林水産省門司植物防疫所に同定を依頼。その結果トマトキバガであることが判明した。
同種は南アメリカ原産だが、2006年にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大。今年5月までに、新たに台湾、中国、中央アジア諸国などでの発生が確認されている。また、国内では、10月に熊本県で初めて確認されている。
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリで、前翅長5ミリ弱。翅を左右に広げたときの両方の翅の先端から先端までの長さは約10ミリ。前翅は灰褐色で黒色斑が散在する。後翅は一様に黒色。幼虫は終齢で約8ミリに達する。体色は淡緑色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
生態は、1年に複数回の世代が発生し、繁殖能力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。卵から成虫になるまでの期間は24~38日程で、気温が低い時期は更に期間が延びる。また、発育下限温度は8℃と推定されている。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生のうちに平均で約260個の卵を産み、寄主植物の葉の裏面などに卵を産み付ける。幼虫では1齢から4齢までの生育ステージがあり、4齢幼虫は土中や葉の表面で蛹化する。
トマトキバガ幼虫(前胸背面後縁の黒色横帯)(写真提供:宮崎県病害虫防除・肥料検査センター)
被害としては、トマトの葉で、内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成。食害部分は表面だけが残って薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに、食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
トマト、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。海外では、ピレスロイド系やジアミド系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が報告されている。
同センターでは次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、別紙に記載された農薬による防除を行う。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行う。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇除去した被害株や被害果などを野外に放置すると、それが発生源となり、周囲に拡散する恐れがあるため、除去する場合は、薬剤を散布し、寄生した成幼虫が死滅したことを確認して、速やかに土中に深く埋却する。または、ビニール袋などに入れて一定期間密閉し、寄生した成幼虫を全て死滅させ、適切に処分する。
〇トマトキバガの発生が疑われる場合は、総合農業試験場病害虫防除・肥料検査課「病害虫防除・肥料検査センター」(電話)0985‐73‐6670)に連絡を。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日