環境再生型農業の実現へ 農業のデジタルツインに関する共同研究を開始 NTT西日本など2022年2月22日
NTT西日本、理化学研究所、福島大学、北海道大学、東京大学、前川総合研究所、大阪環農水研、筑波大学の8組織は、(1)農業の自然循環機能の増進、(2)環境負荷の低減、(3)生物多様性の保全に配慮したネイチャーポジティブな環境再生型農業の普及拡大をめざし、「果樹の農業生態系の各層(土壌及び微生物叢、作物)のデジタルデータ化及びマルチオミクス解析」に関する共同研究を開始する。
農業生態系のデジタル化のイメージ
現在の農業システムは、化学肥料・化学農薬を利用するケースが多く、土壌劣化・水質汚染・温室効果ガス発生など、地球規模での環境汚染を招いている。生物多様性に着目した環境再生型農業に切り替えていく事が世界的にも期待されているが、化学肥料や化学農薬の利用を控えた環境再生型農業は、除草を含む労力がかかり、栽培技術が未確立であり再現性が低いなどの問題から、従来の慣行栽培から切り替えが進んでいないのが実情だ。
共同研究では、自然本来の力を最大限に引き出すため、土壌中の微生物機能に着目して解析を進める。土壌微生物は、その重要性は認識されていたが、解析方法が難しくどのような微生物が存在するか判然としていなかった。同研究では近年開発された解析法を用いることで、各農場内の微生物を評価。農業生態系の各層(土壌及び微生物叢、作物)を科学的に解析し、数値化されたデジタルデータを元に各階層間の相互作用の解明を進める。熟練農家の匠の技を見える化し、誰もが自然環境に配慮した農業に従事できる世界をめざす。
共同研究では、果樹園地の土壌に生息する微生物叢である土壌マイクロバイオーム(土壌微生物プロファイル、土壌微生物の多様度)に基づいた精密診断法を確立することで、生産者が安定的に果樹栽培を実施できるように支援。また、世界的な課題となっている環境再生につながる農業の推進をめざす。研究対象は温州ミカンとし、日本全国の有機栽培、特別栽培、慣行栽培の農場から土壌と作物の両方を収集し科学的に分析し数値化する。
土壌および微生物叢については、化学性や物理性に加えて、従来の土壌分析では実施されていない土壌マイクロバイオームを評価。評価した土壌で栽培された作物については、収量、糖度、酸度、香り成分など品質を多角的に評価し、高品質な作物が栽培される土壌条件を明らかにする。さらに、温室効果ガスなどの環境負荷の定量化も試みる。
こうした土壌および微生物叢と作物が対となった解析データを取りまとめ、主成分分析や相関ネットワーク解析などによる統合マルチオミクス解析を実施。果樹の収量・品質に影響を及ぼす主要因子を明らかにする。さらに、多様な栽培方法の農場から得た土壌及び微生物叢と作物のデジタルデータを格納した土壌データベース・土壌AIエンジンによる精密診断手法を開発する。
土壌マイクロバイオームを含んだマルチオミクス解析を利用する土壌精密診断法の開発を進めることは先進的な試みで、日本の農業における匠の技を世界に向けて発信するイノベーションにつながることが期待される。
共同研究における役割分担
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