微生物間の会話をコントロール クオラムセンシングを活用した害虫死亡率増加剤を発見 静岡大学2022年3月25日
静岡大学農学部の田上陽介准教授の研究グループは、微生物間のコミュニケーションを利用した新しい農業害虫防除法の開発に成功。この研究成果は、特に害虫防除法の一つである不妊虫放飼法の際に有効であると考えられ、他の様々な農業害虫、衛生害虫に対しても同様の効果が期待される。
農業の重要害虫であるマメハモグリバエに対して様々な化学農薬が市販されているが、安全性の面等で懸念がある。同研究ではマメハモグリバエの細胞内共生微生物で、昆虫の約40%に感染しているボルバキアに目を付けた。
ボルバキアには宿主に対して様々な操作を行っていることが知られ、その中に感染オスと非感染メスとの交配でのみ子孫を残せなくする細胞質不和合という現象がある。今回の研究では微生物間のコミュニケーション(クオラムセンシング)を抑制、促進する物質を用いて細胞質不和合という現象が増強、減少するかを、マメハモグリバエが寄主とする植物に散布し影響を調査。その結果、3O-C12-HSLという物質を散布することでボルバキアの相対密度が劇的に増加し、感染オスと非感染メスの交配ではマメハモグリをほぼ死滅することに成功した。
同研究で得られた研究成果は、特に害虫防除法の一つである不妊虫放飼法の際に有効であると考えられる。また、ボルバキアは他の昆虫へ移植可能であり、他の様々な農業害虫、衛生害虫に対しても同様の効果が期待される。
同研究成果は1月24日、アメリカ昆虫学会の発行する国際雑誌『Journal of Insect Science』に掲載された。
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