トマトキバガ(チョウ目キバガ科) 県南西部で発生 大分県2022年3月29日
大分県農林水産研究指導センター農業研究部は、トマトキバガ(チョウ目キバガ科)の発生を県南西部で確認。これを受け、3月24日に病害虫発生予察特殊報第3号を発令した。
トマトキバガ成虫 写真提供:大分県農林水産研究指導センター農業研究部)
3月に、大分県県南西部のトマト施設周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップにおいて、2地点でトマトキバガ疑義成虫が確認された。同研究部は3月18日、その成虫を門司植物防疫所鹿児島支所大分出張所に持ち込み、交尾器を取り出したところ、両地点の個体とも交尾器の特徴から当部職員がトマトキバガであると同定し、大分出張所職員も確認した。現在、同県内でこの種による農作物の被害は確認されていない。
同種は南アメリカ原産だが、2006年にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大。2021年5月までに台湾、中国、中央アジア諸国などで発生が新たに確認されている。また、国内では、2021年10月に熊本県で初めて確認され、同年12月に宮崎県で、今年3月には鹿児島県で確認された。
トマトキバガ老熟幼虫(写真提供:熊本県農業研究センター生産環境研究所)
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリ(前翅長5ミリ弱、開張約10ミリ)。前翅は灰褐色で黒色斑が散在する。後翅は一様に淡黒褐色。幼虫は終齢で約8ミリに達し、体色は淡緑色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
1年に複数回の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。卵~成虫になるまでの期間は24~38日程度で、気温が低い時期はさらに延びる。また、発育下限温度は8℃とされている。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生のうちに平均で約260個の卵を寄生植物の葉の裏面などに産み付ける。幼虫は1齢~4齢までの発育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。
幼虫によるトマトの被害葉(写真提供:熊本県農業研究センター生産環境研究所)
被害としては、トマトでは、葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成される。食害部分は表面のみ残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じる。また、食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
トマト、ピーマン、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。海外では、ピレスロイド系やジアミド系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が報告されている。
幼虫によるトマトの被害果(写真提供:熊本県農業研究センター生産環境研究所)
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条1項に基づく措置として、別
紙に記載された農薬による防除を行う。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統が異なる薬剤のローテーション散布を行う。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇被害葉や被害果は圃場内から持ち出すとともに、野外に放置せずに速やかに適切に処分する。
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