トマトキバガ 四国で初の発生を確認 愛媛県2022年5月24日
愛媛県病害虫防除所は、トマトキバガ(チョウ目キバガ科)の発生を県内で初めて確認。これを受け、5月20日に病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。同虫の発生は20日時点で四国で初の確認となる。
フェロモントラップで捕獲されたトマトキバガ(写真提供:愛媛県病害虫防除所)
4月に中予地域のトマト施設周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップで、1地点でトマトキバガ疑似成虫が誘殺された。捕獲された成虫を神戸植物防疫所に同定依頼した結果、愛媛県では未発生のトマトキバガであると同定された。なお、県内では5地点にトラップを設置しているが、他の4地点では確認されていない。また、現在のところ愛媛県内では同虫による農作物の被害は認められていない。
同種は南米原産だが、2006年にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布。2021年5月までに、台湾、中国、中央アジア諸国などで発生が確認されている。また、国内では2021年10月に熊本県で初めて確認され、同年12月に宮崎県、令和4年3月に鹿児島県、大分県、福岡県、長崎県で確認されている。
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリ(前翅長5ミリ弱、開帳で約10ミリ)。前翅は灰褐色で黒色斑が散在する。後翅は一様に淡黒褐色。幼虫は終齢で約8ミリに達し、体色は淡緑色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
生態は、1年に複数回の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。卵~成虫になるまでの期間は24~38日程度で、気温が低い時期はさらに延びる。発育 下限温度は8℃とされている。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生のうち平均で約260個の卵を寄生植物の葉の裏面などに産み付ける。幼虫は1~4齢までの生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。
トマトキバガ幼虫(写真提供:熊本県病害虫防除所)
トマトでは、葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成される。食害部分は表面のみを残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに食害部分の腐敗が生じ果実品質が著しく低下。また、海外では、ばれいしょの地上部を加害し、塊茎は直接加害しないとされてきたが、近年、フランスでは、ばれいしょ塊茎への直接加害も報告されている。
トマト、ピーマン、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認。海外では、ピレスロイド系やジアミド系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が確認されている。
トマトキバガによる果実の被害(写真提供:熊本県病害虫防除所)
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条1項に基づく措置として防除に使用可能な農薬を、同防除所のHPで紹介している。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行う。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇被害葉や被害果はほ場内から持ち出すとともに、野外に放置せず速やかに適切に処分する。また、掘り取ったいもは長く圃場に放置せず、残りいもも適正に処分する。
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