メコンデルタにおける間断灌漑技術のメリットをLCAで評価 国際農研2022年6月24日
国際農研は、ベトナム・メコンデルタの農村地域で、間断かんがい(AWD)の通年実施のメリットを評価。AWD実施農家は、通年で6%の増益と8%の温室効果ガス(GHG)排出量を削減することを明らかにした。農家の増益を実現しながら、GHG 排出を削減できるコベネフィットな技術として、アジアモンスーン地域への展開が期待される。
図1:常時湛水と間断かんがい(AWD)における一作期中の水管理(例)
ベトナム南部に位置するメコンデルタは、肥沃な低地が広がり降水量も多く、国内最大の水稲作地域。近年、イネの品種改良や氾濫防止用の高堤防整備によって、三期作栽培が行われるようになり、コメの作付面積が拡大している。作付面積の拡大は、食料需要に応える有効な手段だが、メタンをはじめとするGHG 排出と水需要への対応策が求められている。
国際農研は、みどりの食料システム戦略 や、グローバル・メタン・プレッジなどを踏まえ、気候変動適応に貢献するためにアジアモンスーン地域でのAWDのさらなる普及をめざした研究を実施。これまで、メタン削減、かんがい用ポンプ運転経費削減や収量増加など、AWD実施によるメリットは、国際農研をはじめ多くの研究者により報告されてきた。
図2:農家データを用いた農家の利益とライフサイクル温室効果ガスの計算
一方、AWDのデメリットとして、一酸化二窒素(N2O)の増加や雨季の排水用ポンプ運転経費の増加が報告されているが、農家の利益やGHG 排出への影響を包括的に考慮した評価はほとんどなく、AWDを通年実施するメリットは明らかになっていない。そこで、国際農研では、ベトナム・メコンデルタに位置するアンジャン省で稲作農家を対象に、AWD 実施による農家の利益とGHG 排出量を各作付け時期および通年で算定。その結果、年間を通じてAWDを実施した場合、農家の利益はAWD未実施農家と比べ6%増益することや、GHG排出量は38%削減することを明らかにした。
年間を通じたAWDの実施は、農家の増益と農業からの環境負荷軽減を両立するコベネフィットな農業システムで、アジアモンスーン地域における気候変動の有望な緩和策とその適応策として期待される。
同研究の成果は、科学雑誌『Journal of Cleaner Production』オンライン版で4月4日に掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(149)-改正食料・農業・農村基本法(35)-2025年7月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(66)【防除学習帖】第305回2025年7月5日
-
農薬の正しい使い方(39)【今さら聞けない営農情報】第305回2025年7月5日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日