点滴灌水システムで米の生産を転換 国内初の大規模実証実験開始 ネタフィム2022年7月27日
精密灌水システムを扱うイスラエル発のアグリテック企業、ネタフィムジャパンは、秋田県五城目町と長野県東御市の2拠点で、点滴灌水を導入した乾田での米栽培の実証実験を開始。水と肥料の無駄を削減し、メタンガス発生を抑制するサステナブルな生産への転換を促す。
点滴灌水導入圃場(長野県東御市八重原地区)
この取り組みでは、日本のほ場での点滴灌水による効果を多角的に計測。秋田県五城目町と長野県東御市の農業法人との共同プロジェクトで、日本に古くから伝わる水田文化からの転換を中心に、農作業と生産過程の課題解決をめざす。
世界で発生する温室効果ガスの24%は、農林業や土地利用から発生している。農林水産省によると、日本の農業分野においては年間5001万トン発生。そのうち二酸化炭素の28倍とも言われる温室効果のあるメタンガスは、46%と最も比率が高く、その半分以上が稲作に由来している。
土壌の上に水を張ることで、土に空気が触れず、保温や雑草対策という優れた効果がある水田での栽培は日本に根付いた米の栽培文化。一方で、水田の土壌の中には、空気に触れず酸素が少ない環境で、有機物が分解する際にメタンを生成する「微生物」(メタン生成菌)が存在している。
点滴灌水システムでは、土壌に水を張らず、乾いた土壌に点滴チューブを設置して灌水することで、土が常に空気に触れてメタンガスが発生することを大幅に抑制。地球環境への負荷を軽減でき、「水と肥料の有効活用」「労力削減」など点滴チューブを使った精密管理農業ならではの効果も見込める。また、メタンガスの抑制方法として中干し期間の長期化も推奨されているが、点滴灌水は抜本的に栽培方法を転換することで、慣行農業の課題解決もめざす。
田植え後、水を落として点滴灌水システムおよび点滴チューブを設置した直後の様子
肥料を無駄なく有効利用できる点滴灌水
点滴灌水は、作物に直接必要な最小限の水と液体肥料を与えられるため、一度に大量の肥料を与え、大雨で流れてしまうなどの無駄を防ぐことができる。特に、近年のゲリラ豪雨や干ばつなどの不安定な気候では、少しずつ精密な管理によって灌水・施肥を行い、常に土壌を健康な状態に保つことが、長期にわたる甚大な被害を受けないためにより重要な条件になっている。また、高騰する肥料を無駄なく有効に利用できる。
水資源に恵まれ、伝統的に水田で米を作ってきた日本で、米に点滴灌水を導入する理由として同社は、近年の異常気象による干ばつの発生や、突然の豪雨による土壌への被害に、潜在的な課題として農業用水路の水門の開閉や調整など管理に多くの労働力が割かれていることなどを挙げる。
こうした観点から、日本国内では、施設園芸や果樹・露地栽培の作物で点滴灌水システムが導入されているが、稲作分野で水稲品種の栽培に点滴灌水を導入するのは同社として初の試みとなる。同社は、「このような状況に対応するべく、必要な時に必要最小限の水と肥料の供給を行う点滴灌水を用いて、精密な管理を施し、節制された仕組みを導入することが有効」としている。
点滴灌水システム導入後、1か月が経過。乾いた田に、点滴チューブから灌水され稲が成長している
重要な記事
最新の記事
-
備蓄米 「味に差なく、おいしく食べてほしい」 江藤農相2025年4月24日
-
関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
【JA人事】JA北オホーツク(北海道)吉田組合長を再任2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
農林中金 ロンコ・インベストメント・マネジメントに資本参画 不動産分野の連携強化2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
みずほ銀行と食農領域の持続可能な発展に向け戦略的提携 クボタ2025年4月24日
-
【人事異動】兼松(6月1日付)2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日