【特殊報】クロテンコナカイガラムシ 県内で初めて確認 兵庫県2022年9月21日
兵庫県病害虫防除所は、トマト、ナス、オクラ、キクにクロテンコナカイガラムシを同県では初めて、県東部で確認。これを受けて、9月21日に病害虫発生予察特殊報第3号を発令した。
クロテンコナカイガラムシ雌成虫(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
8月下旬、兵庫県東部の施設栽培のトマト、ナス、オクラにコナカイガラムシ類の発生が認められた。また、同地域で栽培されていた露地キクにも類似したコナカイガラムシ類が確認された。農林水産省神戸植物防疫所に同定を依頼したところ、いずれも同県では未確認のクロテンコナカイガラムシ(PhenacoccussolenopsisTinsley)であることが判明した。
オクラの生長点に寄生するクロテンコナカイガラムシ(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
国内では、2009年に沖縄県(スイセンジナ、ヒマワリ)で発生が初めて確認され、その後、佐賀県(ナス)、福岡県(ミニトマト、ナス)、愛知県(食用トレニア、食用キンギョソウ)、山口県(トマト)、高知県(ナス)、鹿児島県(ミニトマト)、大阪府(ナス)、奈良県(ホウレンソウ)、長崎県(ナス)、京都府(トマト)、愛媛県(ナス)、岡山県(ナス)で発生が確認されている。
雌成虫は翅がなく、体型は楕円形。体長は通常3~4ミリ程度で、大きい個体は5ミリを超える。背面に白色のロウ物質を分泌するため、全体としては白く見えるが、背面の前方と後方にそれぞれ1対の明瞭な黒斑(縦線)が見られる。
キクに寄生するクロテンコナカイガラムシと生長点の萎縮症状(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
繁殖は、交尾後産卵する有性生殖と雌成虫が交尾しない単為生殖の両方が知られている。卵の多くは雌成虫の体内でふ化。1齢幼虫は歩行により分散する。雄では2齢幼虫の終わりにまゆを作り、前蛹、蛹を経て羽化し、1対の翅を持つ成虫となる。雌は2齢、3齢幼虫を経て成虫となる。成虫は、ワタ状のロウ物質の卵のう内に350個程度産卵。1世代の卵から成虫までに要する期間は70日程度。
葉、葉柄、茎、花芽および果実に寄生する。吸汁することで葉が萎縮し、衰弱するほか、分泌した甘露(糖分を多く含む排泄物)による果実の汚れやすす症状を引き起こす。海外ではトマト、オクラ、ナスなど、53科154種の植物に寄生することが知られている。
トマト残渣に残るクロテンコナカイガラムシ(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇寄主植物が広範囲にわたり、スベリヒユなどの雑草にも寄生する。寄生された植物やその残渣を放置すると、近隣の作物や雑草に同種が移動し、繁殖する可能性がある。周辺への発生拡大を防ぐため、同種の発生を確認した場合は速やかに寄生部位を除去し、ほ場外に持ち出して土中に埋める。また、袋に密閉した上で処分するなど、適切に処理する。
〇薬剤による防除については、発生を確認したら、速やかに散布を行う。成虫はロウ物質で覆われ、生長点や花蕾、果実の隙間など狭い部位に寄生する。防除効果を高めるため、十分量の薬剤を虫体に直接かけるように散布する。なお、ナスのコナカイガラムシ類に対しては、アセタミプリド水溶剤(商品名:モスピラン顆粒水溶剤)の登録がある。
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