タマネギの品種育成の効率化へ 画期的なDNA 多型分析手法を開発 農研機構2022年9月27日
農研機構は、東北大学、山口大学、かずさDNA研究所、京都産業大学、龍谷大学、国立遺伝学研究所との共同研究で、巨大なゲノムのためDNA分析が困難だったタマネギで、染色体全体のDNA型の違いを効率的に分析できる手法の開発に成功した。同技術により、苗の段階で有用な形質を持つタマネギを選べるDNAの目印を迅速に開発でき、新品種の早期育成が期待できる。
図1:野菜品目におけるゲノムサイズの違い
これまで、病気に強い、収量が高いなどの望ましい形質をもつ野菜を選び出すには、たくさんの個体の栽培、形質の調査、有望な個体の選抜を繰り返すことが必要だった。また、新しい品種の育成には多くの労力と長い時間を費やしてきた。
品種育成の効率化には、DNA型の違い(DNA多型)を検出するDNAマーカーを開発し、活用することが有効。特に、特定の形質と関連したDNAマーカー(選抜マーカー)は、DNA多型によって特定の形質が優れた個体を苗の段階で判別できるため、様々な形質について開発が望まれている。
選抜マーカーの開発には、まず染色体全体のDNA多型を調べ、それらと形質データを照らし合わせて、目的の形質と関連するDNA多型の位置を特定する必要がある。近年は次世代シーケンサーの登場により、大量のDNA情報を安価に解読できるようになったため、染色体全体でのDNA多型の効率的な分析が可能に。多くの野菜品目において選抜マーカーの開発が飛躍的に進んでいる。
しかし、タマネギでは染色体全体でのDNA多型の分析は容易ではなかった。生物によって染色体全体のDNA情報であるゲノムサイズは、大きく異なるが、タマネギのゲノムサイズは野菜の中でも最大級で、その大きさはトマトの16倍もある。そのため、トマトなど他の品目で使われてきた手法を用いて、タマネギの染色体全体でのDNA分析を行う場合、解析に要する費用や時間が大幅に増加することが予想される。この手法でのタマネギのDNA分析は困難で、タマネギでは染色体全体でのDNA分析法が確立していないため、選抜マーカーの開発や育種利用が遅れていた。
そこで、農研機構をはじめとする共同研究グループは、タマネギにおいて、染色体全体のDNA多型を効率的に分析する方法の開発を目指した。まず、タマネギにある8本の染色体について、各々に均一に配置され、染色体全体をカバーしたDNAマーカーセットを作成。次に、次世代シーケンサーを利用し、これらのマーカーセットの全てのDNA多型を一度にまとめて分析する手法を試みた。
その結果、染色体全体のDNA多型を効率的に分析することに成功。この分析手法で得られた個体間のDNA多型と形質を照らし合わせれば、DNAマーカーセットの中から目的の形質と関連したDNAマーカーを特定でき、選抜マーカーとして利用できるようになる。
この技術は、タマネギでの選抜マーカーの開発を飛躍的に進め、育種の効率化および新品種の早期育成に貢献することが期待できる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































