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「足元で起きる進化」1種の形態進化が変える植物群集の多様性を明らかに 千葉大学2022年10月4日

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千葉大学大学院園芸学研究院の深野祐也准教授、東京都立大学大学院理学研究科の立木佑弥助教、東北大学大学院/IGB-Berlinの笠田実学振特別研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科の内田圭助教の共同研究グループは、たった1種の植物の形態進化が、植物群集全体の多様性にまで影響しうることを野外移植実験で示した。この成果は、生物の急速な進化が、その生物がいる生物群集や多様性にまで波及することを野外環境で明らかにした初めての成果。

写真1:同一条件で栽培した農地系統と都市系統のオヒシバの草姿の違い。農地系統は直立型、都市系統は匍匐型を示す

写真1:同一条件で栽培した農地系統と都市系統のオヒシバの草姿の違い。
農地系統は直立型、都市系統は匍匐型を示す

研究グループは、これまでに都市と農地の雑草がそれぞれの環境に適応し、急速に形態(草姿)を分化させていることを解明。都市環境は植物の密度が低いため競争能力が低い匍匐型の草姿が、農地環境では植物の密度が高いため競争能力が高い直立型の草姿が進化している。

匍匐型は水平に広がって光を効率よく受けられるため、密度が低い都市部で有利になる一方、高く育つことができないため密度が低い農地環境では競争にまけてしまう。そこで、同研究ではオヒシバというごく普通の雑草の、都市系統(匍匐型)と農地系統(直立型)の草姿の違いが草地の他の植物に与える影響に注目した(写真1)。

様々な草姿を持つオヒシバを野外の草地に移植し、周囲の植物の成長をモニタリングすることで、急速な進化が野外の植物群集に与える影響を定量化した。

写真2:オヒシバを移植した草地。7月に移植し2か月経過した時の植物調査の様子写真2:オヒシバを移植した草地。7月に移植し2か月経過した時の植物調査の様子

野外移植実験(写真2)の結果、オヒシバの草姿の違いは、オヒシバ自身の成長や種子生産だけでなく、競争する別の種の成長や種子生産にまで影響していた。移植したオヒシバが直立型であるほど、オヒシバは光を巡る競争に勝ち大きくなるだけでなく、周囲に生えている競争相手、特にこの草地での優占種のメヒシバの被度が小さくなる傾向にあった。これは、オヒシバの草姿の進化は、自分自身の成長や繁殖だけでなく、競争相手にまで影響することを示している。

さらに、移植したオヒシバの周囲の全植物種の成長をモニタリングしたところ、オヒシバの草姿はメヒシバという優占種の成長を抑制した結果として、周囲の植物種の多様性にまで影響していることが分かった。メヒシバの被度が低下するほど、その周囲で多様性が増加する傾向がある。また、直立型のオヒシバは優占種のメヒシバの成長を抑制することで、その他多くの低頻度な植物の生き残を促進するプロセスが生じ、種の多様性が増加する傾向があった。

これらの結果をまとめると、人間の活動によって
生じた都市と農地という環境間で、競争環境の違いによってオヒシバの競争形質の進化が生じ、その形質進化は優占種(メヒシバ)との競争に影響することで植物群集全体の多様性に影響を与えたことが分かった。

人間は、自然環境に大きな影響を与えており、それによって様々な生物が急速に適応進化している。同研究は、たった1種の形質進化でも、種間の競争関係を変化させ、生物群集の種数にまで影響することを示した。

同研究成果は英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)で9月28日(英国夏時間)に電子出版された。

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