【特殊報】トマト黄化葉巻病 県内で初めて発生を確認 宮城県2022年11月18日
宮城県病害虫防除所は、トマト黄化葉巻病の発生を県内で初めて確認。これを受けて、11月18日に病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
タバココナジラミの成虫(写真提供:宮城県病害虫防除所)
10月に仙台地域のトマト栽培施設で、葉縁部の退緑や葉巻、縮葉を呈する株の発生が確認された。宮城県農業・園芸総合研究所でPCR法による遺伝子診断を行なった結果、トマト黄化葉巻ウイルス(Tomato yellow leaf curl virus ,TYLCV)が検出。トマト黄化葉巻病であることが確認された。宮城県での発生確認は初めて。
同病害は、国内では1996年に静岡県、愛知県、長崎県で初めて発生が確認された。11月11日時点で福島県や岩手県を含め、41都府県で発生が確認されている。
発病初期は、上位葉が葉縁部から黄化して葉巻症状を示し、その後葉脈間が黄化して縮葉となる。症状が進行すると、頂部が叢生して株全体が萎縮。発病前に着果した果実は正常に発育するが、発病後は蕾のまま落下したり、開花しても結実しないことが多く、生育初期に感染すると収穫皆無となることもある。
トマト黄化葉巻病の症状。葉縁部の退緑と葉巻症状(写真提供:宮城県病害虫防除所)
同ウイルスは、タバココナジラミ(主にバイオタイプB及びQ)により媒介され、オンシツコナジラミは同ウイルスを媒介しない。タバココナジラミが罹病植物を吸汁することによりウイルスを獲得し、死亡するまで伝搬能力を有し、経卵伝染はしない。また、土壌伝染、種子伝染、一般の管理作業などによる接触伝染(汁液伝染)は確認されていない。
国内で同病の自然発生が確認されているのは、トマト、ミニトマト、トルコギキョウ。その他キク科(ノゲシ、ヒャクニチソウ)、ナス科(タバコ、チョウセンアサガオ、ペチュニア、ピーマン、ジャガイモ)、マメ科(インゲンマメ、ヒラマメ)など8科18種以上の植物で感染が確認されているが、感染しても無病徴の場合がある。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇同ウイルスはタバココナジラミによって媒介されるため、媒介虫の防除を徹底する。
〇苗の購入に際しては、ウイルス感染やタバココナジラミの寄生がない健全苗であることを確認する。
〇施設の開口部に目合い0.4ミリ以下の防虫ネットを設置しタバココナジラミの侵入を防ぐ。
〇施設内および周辺雑草はウイルス伝染源やタバココナジラミの生息場所となるため、施設内外の除草を徹底する。
〇主に幼虫や蛹の生息する下位葉は、生育に応じて葉かきをし、葉は土中に埋めるか焼却処分する。
〇罹病株は見つけ次第抜き取り、ビニール袋に入れて密閉。株が枯れた後に土中に埋没するなどして処分する。
〇栽培終了後は、施設を密閉して高温を保ち(40℃以上、10日以上)、タバココナジラミを死滅させてから,速やかに残さを除去する。
〇タバココナジラミのバイオタイプQは、バイオタイプBと比較して、ネオニコチノイド系薬剤の一部、合成ピレスロイド系薬剤、ピリプロキシフェン剤等に対する感受性が低い事例が他県で報告されていることから、薬剤の選定に注意する。気門封鎖型薬剤や天敵による防除もあわせて行う。
〇薬剤については、「令和4年度宮城県農作物病害虫・雑草防除指針」を参考に選定する。
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