アブラナ科黒斑細菌病菌を効果的に分離・識別 新しい選択培地を開発 農研機構2022年11月25日
農研機構は、アブラナ科野菜の生産で世界的に大きな問題となっている種子伝染性の黒斑細菌病を引き起こす病原細菌を分離するための選択培地を開発。正確で効率の良い種子検査手法への利用が可能で、アブラナ科野菜の安定生産と重要産業である野菜種子の輸出に貢献する。
ハクサイ栽培圃場で発生した黒斑細菌病(A, B)およびダイコンの黒芯症(C)
アブラナ科野菜の黒斑細菌病は、ダイコン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ハクサイ、カブ等に発生。その被害はアブラナ科野菜の安定生産の上で国内だけでなく世界的に大きな問題となっている。
同病は、種子に付着した病原細菌により伝染するため、防除対策の中で健全な種子の確保が最も重要。日本は野菜種子の輸出を行っており、輸出相手国からアブラナ科野菜の黒斑細菌病の「種子の無病証明書」が求められる場面がある。種子が病原細菌に汚染されているかを調べるには、選択培地を用いて種子サンプルから細菌を分離し、分離した細菌の病原性を確認することが必要となる。
そこで、農研機構は1月、既存の選択培地および改良培地を用いて国内の種子検査を行う機関に向けて「ダイコン種子の黒斑細菌病菌検査 標準作業手順書(SOP)4)」を公開したが、黒斑細菌病菌には複数の種・系統が存在し、既存の選択培地上での生育状態がそれぞれで異なることから、一部の種子サンプルでは黒斑細菌病菌と種子由来のその他の細菌との違いを識別することが難しかった。
この課題解決に向けて、農研機構では、アブラナ科黒斑細菌病菌を選択的に識別可能な2種類の選択培地を新たに開発。今回開発した2種類の選択培地は既存の選択培地に比べ、アブラナ科黒斑細菌病菌を選択的に増殖させる効果が高く、病原細菌を容易に見分けることができる。今後は新たに開発した選択培地を加えてSOPを改訂し、より正確で検査効率の良い手法として公開する。
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