【特殊報】トマトに国内未発生の「LELCV」感染を確認 沖縄県2022年12月23日
沖縄県病害虫防除技術センターは、トマトに、国内未発生のLisianthus enation leaf curl virus(LELCV)の感染を沖縄本島で確認。これを受けて、12月21日に令和4年度病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
TYLCVとLELCVの複合感染症状(左)、TYLCVの症状(写真提供:沖縄県病害虫防除技術センター)
2020年3月、沖縄本島南部(豊見城市、糸満市)の施設トマトに、上位葉に黄化葉巻症状を呈する株がみられた。近畿大学がウイルス種の同定を行った結果、国内未発生のLELCVの感染が確認された。
同ウイルスは国内初確認であるため、11月に県全域を対象とした発生状況調査を行い、琉球大学農学部植物病理学研究室に同定を依頼した結果、沖縄本島南部(豊見城市)および北部(名護市)で発生が確認された。また、沖縄県では同ウイルスと同様の黄化葉巻症状を引き起こすTomato yellow leaf curl virus(TYLCV)が2006年12月に確認されており、同調査のLELCV陽性株は全てTYLCVとの複合感染だった。
なお、沖縄県において、同ウイルスの単独感染による直接的な農業被害は確認されていない。
病徴としては、生長点付近の上位葉に黄化、葉巻、萎縮の症状が現れ、生育不良となり収量が低下する可能性がある。
同ウイルスはベゴモウイルス属に属する。同属の他ウイルスと同様にタバココナジラミにより媒介される可能性が高い。汁液伝染、種子伝染、土壌伝染は確認されていない。媒介虫は、罹病植物を吸汁することで病原ウイルスを保毒し、一度ウイルスを獲得すると永続伝搬能力を持つ。経卵伝染は確認されていない。
同ウイルスは、トマト、トルコギキョウ、カボチャ、ピーマン、トウガラシで感染が確認されている。
媒介虫のタバココナジラミ幼虫・成虫(沖縄県病害虫防除技術センター)
同センターでは次のとおり防除対策を呼びかけている。
トマト黄化葉巻病の病徴が見られる株は、二次伝染源となるため早急に抜き取り処分する。抜き取った株は放置せず、ビニール袋に入れるなどして密閉処分する。また、ウイルスは一度感染すると治癒しないことから、以下のとおり媒介虫タバココナジラミの防除対策を主に行う。
〇栽培初期に発生すると多大な被害を出すため、育苗期・定植期の防除を徹底する。
〇施設では侵入防止のため、開口部に0.4ミリ以下の目合いの細かい防虫ネットを使用し、出入口は二重カーテンを展張する。
〇多発すると防除が困難になるため、黄色粘着板等を用いて早期発見に努め、発生を確認したら直ちに薬剤防除を行う。また、薬剤抵抗性を発達させやすいため同系統薬剤の連用を避ける。
〇管理されていない施設内外のトマトおよびミニトマトは、発生源となるため除去する。また、同種は多くの雑草に寄生するため、ほ場内および周辺の除草に努める。
〇施設では、栽培終了後に蒸し込みし、トマトが完全に枯死したのを確認して処分する。
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