潮の満ち引きを利用した地下ダム機能監視手法を開発 農研機構2023年1月13日
農研機構は、沿岸域の地下水資源を塩水化から守る「地下ダム」の機能を、潮の満ち引きの影響を受ける地下水位観測データを用いて監視できる手法を開発した。同成果は、地下ダムの止水機能の連続的な監視を可能にし、貴重な農業用水源である沿岸域の地下水を塩水化から守ることに役立つ。
図1:地下水の塩水化を防ぐ地下ダムにおける潮の満ち引きを利用した機能監視の概念図
沖縄・奄美などの南西諸島では、地下に地下水の流れを遮る壁(地下止水壁)を造って地下水資源を貯める「地下ダム」が建設され、貴重な農業用水源として利用されている。
沿岸域の海に接する地層中に造られた地下ダムの止水壁は、海水が内陸の地層に浸入するのを防ぐことで淡水の地下水資源を塩水化から守っている。従来こうした地下ダムの止水機能の点検方法として、地下水の塩分の目安となる電気伝導率(電気の通りやすさ)を測定する機器を現地に携行し、多数地点で測定して塩水の分布範囲を確認する方法があった。この方法では測定時点の塩水分布状況は分かるが、連続的な機能監視に利用することは困難だった。
そこで農研機構は、沿岸域の地下水資源を塩水化から守る地下ダムの止水機能の連続的な監視に利用できる手法を開発。この手法では、止水壁を挟んで海側と内陸側の地下水位の時間変化データに含まれる潮の満ち引きの影響による周期的振動を分析する。二地点の振動の大きさの関係を分析した結果に異常がなければ、地下ダムの止水機能が正常に保たれていると考えられる。市販の地下水位観測機器を設置して得られる連続データを用いることで、地下ダムの止水機能の連続的な監視が可能となる。
仮に大地震などで止水機能の低下が発生した場合、速やかな発見と対策に必要性な判断を助け、地下ダムに貯えられた地下水の塩水化を最小限に抑えることが期待される。今後は、開発手法について解説する説明会などを通じて、地下ダムの管理に関わる人々へ普及していく。
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