ナトリウムの可視化で多様な耐塩性を明らかに 淡水資源不足解決へ期待 農研機構2023年3月9日
農研機構は、量子科学技術研究開発機構(量研)、筑波大学および東京大学と共同で、耐塩性のアズキ近縁種4種について塩水にさらした際の植物体中のナトリウムの分布を可視化し、4種がそれぞれ異なる分布を示すことを明らかにした。これら4種は異なる耐塩性機構を持つことが示唆され、複数の耐塩性の組み合わせによる超耐塩性作物の創出を通じて淡水資源不足の解決に貢献することが期待される。
淡水(地下水も含む)は限られた資源である一方、農業は、最も多くの淡水を必要とする産業。雨が少ない地域では、灌漑用水を地下水に頼らざるを得ないが、近い将来、灌漑用水だけでなく飲料水も十分に供給できなくなるのではないかという予測もある。
限りある淡水資源に起因する問題の解決策の一つとして、塩水でも栽培可能な作物の開発が挙げられる。海水だけでなく、一定以上の塩分を含んだ地下水は、淡水の地下水と比較して豊富な埋蔵量があるとされ、塩水を用いた水耕栽培が可能な作物を開発することで、淡水資源に依存しない農業生産を実現し得ると考えられる。
これまでも多くの研究者によって耐塩性作物の開発が行われ、海水に浸っても枯死しない植物は開発されているが、農業を営むには、塩水で枯死しないだけでなく、十分に育つ作物の開発が必要となる。
そこで、優良な耐塩性を備える新たな品種の育成に資する遺伝資源の発見を目的として、同研究グループは、海岸で生育し高い耐塩性を示す野生のアズキ近縁種4種の耐塩性機構の解明に取り組んだ。この目的を遂行するにあたり、放射線可視化技術を利用。放射線は本来視認することはできないが、特殊な装置を使うことで、放射線を可視画像の中に捉えることができる。
ナトリウムの放射性同位体(放射性ナトリウム)を植物の根から取り込ませ、この可視化技術で画像化すると、植物体のどこにナトリウムが蓄積されているのかを簡単に識別が可能。この方法で植物体内のナトリウム分布を調べた結果、耐塩性を有するアズキ近縁種4種は互いに全く異なるナトリウム蓄積パターンを示すことが明らかになった。これは、作物近縁種において多様な耐塩性機構が存在することを示した世界で初めての成果となる。
この研究結果をもとに、複数の耐塩性に関わる遺伝子を同定できれば、従来よりもさらに高い耐塩性を備えた作物を創り出すことが可能となり、このような作物によって農業現場における淡水資源不足に起因する問題の解決に貢献することが期待される。
重要な記事
最新の記事
-
震災から1年 能登復旧遅れ 倒壊家屋なお 地域喪失 他人事でなく(2) ジャーナリスト・青木理氏【2025国際協同組合年 どうする・この国の進路】2025年1月8日
-
330万羽が殺処分対象 鳥インフルエンザ 衛生管理徹底を2025年1月8日
-
農政 大転換の年へ 江藤農相2025年1月8日
-
「協同組合基本法」制定めざしシンポジウム 1月28日 JCA2025年1月8日
-
価格転嫁拒否は「違法」 公取委が日本郵便を指導 運転手の待遇改善、物流維持に不可欠2025年1月8日
-
おもしろうてやがて悲しき「楽しい日本」【小松泰信・地方の眼力】2025年1月8日
-
米を民間輸入 卸「関税払ってもペイする」 背景に深刻な不足感2025年1月8日
-
年頭あいさつ2025 各団体まとめ2025年1月8日
-
鳥インフル 米カンザス州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月8日
-
売り切れ必至の人気商品「"のむ"りんご」 JAタウン「おらほの逸品館」で販売開始 JA全農あきた2025年1月8日
-
農林中金 農業経営の情報プラットフォーム「AgriweB」を子会社2025年1月8日
-
適正な価格形成に向け消費者に情報発信 全農賀詞交換会2025年1月8日
-
栃木米アンバサダー U字工事が登場「とちぎの星」PRイベント開催 JA全農とちぎ2025年1月8日
-
「冬土用未の日」で新たなマーケット創出へ 企業・団体と連携 JA熊本経済連2025年1月8日
-
100周年記念キャンペーンを開催 井関農機2025年1月8日
-
食料自給率向上へ 新ブランド『和小麦』立ち上げ Pasco2025年1月8日
-
茨城県桜川市発「霞ヶ浦キャビア」で地方創生と農業の未来を拓く挑戦 クラファン開始2025年1月8日
-
「第21回都市農業シンポジウム」開催 東京都日野市2025年1月8日
-
「AJINOMOTO オリーブオイル」シリーズ400g瓶 容器を軽量化 JOYL2025年1月8日
-
特産品「蔵出しみかん」新パッケージ『冬眠みかん』で市場拡大 和歌山県海南市2025年1月8日