昆虫「オス殺し遺伝子」発見 ウイルスの多様な機能の一端を解明 農研機構2023年3月24日
農研機構、愛媛大学を中心とする研究グループはは、昆虫の母親から卵に伝わりオスの発生を止める「オス殺し」に関与するウイルスをショウジョウバエの1種から発見。そのウイルスのゲノム構造を解明し、ウイルスが持つ昆虫のオス殺し遺伝子を世界で初めて特定した。オス殺し遺伝子機能の解明は、昆虫の性決定システムの包括的理解につながるとともに、性をコントロールすることによる害虫防除や有用昆虫改変技術の開発にも役立つことが期待される。
図1:研究のまとめ。ヤマカオジロショウジョウバエからオスを殺すウイルスを発見
昆虫には、細胞内に存在し、母親から子どもに伝わる様々な微生物がいることが知られている。特に細菌ボルバキアなどの共生微生物は、昆虫のオスのみを胚の時期に殺す「オス殺し」を引き起こしたり、遺伝的なオス個体の表現型をメスに性転換させる「メス化」を引き起こしたり、宿主を様々な方法で自分の都合のいいように生殖操作することから、そのメカニズム解明や応用利用に関して注目が集まっている。
農研機構、愛媛大学を中心とする研究グループは、ヤマカオジロショウジョウバエ(Drosophilabiauraria)において、オス殺しが起きる系統を発見。当初、ボルバキアなどの共生細菌がオス殺しの原因であることを想定して調査を進めたが、細菌の存在を確認することができなかった。その後、この系統の解析を進めた結果、オス殺しの原因は細菌ではなく、パルティティウイルス科に近縁な二本鎖RNAウイルスであることが判明した。
その後、さらに京都大学、群馬大学、国立衛研の研究者の協力を得て、このウイルスは、遺伝子を4個しか持たず、そのうちの1個がオスを殺す原因遺伝子であることを明らかにした(図1)。
昆虫が持つ共生ウイルスはほとんど手が付けられていない未踏の分野であり、今後様々な発見やその利用が期待される。また、今回見つかったオス殺し遺伝子の解析は、昆虫の性決定システムや昆虫とウイルスとの相互作用に関する深い理解につながるだけでなく、性をコントロールすることによる害虫防除や有用昆虫改変等、新たな昆虫制御技術の開発に役立つことが期待される。
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