農業機械技術クラスター事業「らっきょう収穫機」など5課題を追加 農研機構2023年4月24日
農研機構は、4月から生産現場等からの要請対応やスマート農業の推進のため、農業機械技術クラスター事業において5つの課題を新たに追加。「らっきょう収穫機」、「高湿材適応コンバイン」などの開発を新たに開始する。
農研機構では、生産現場の要望の実現を図るため、多様なメンバーで構成する「農業機械技術クラスター事業」を2018年4月に立ち上げ、多様な現場ニーズに即応し、異分野の知見を取り入れながら、農業機械の研究開発を行っている。
技術クラスターで扱うプロジェクトは、①地域農業機械化支援タイプ、②革新コア技術実用化タイプ、③次世代革新基盤技術タイプ、④新技術導入効果実証タイプの4つのカテゴリーに分類。今回、新たに、(1)らっきょう収穫機の開発、(2)高湿材適応コンバインの開発、(3)土塊・石礫除去装置付きポテトハーベスタの開発、(4)ほ場栽培データと乾燥調製データを統合したデータ駆動型水稲作の実証、(5)農作業安全を考慮した基盤整備事業におけるリスク低減効果の実証、の5件の研究課題を開始する。
◎新たな研究5課題
(1)らっきょう収穫機の開発
(研究期間:2023~2025年度、①地域農業機械化支援タイプ)
<目的>
らっきょうの主産地である鳥取県におけるらっきょう栽培の総作業時間は、322h/10aで、そのうち収穫及び調製作業時間はほとんどが手作業。192h/10aと総作業時間の約6割を占めており、省力化が求められている。また、作業者の高齢化や他産業との雇用の競合による人手不足が深刻な問題となっている。
このため、掘り取りと同時に根と葉を切ることにより、根付きらっきょうの収穫及び調製作業を大幅に省力化できるらっきょう収穫機を開発する。
(2)高湿材適応コンバインの開発
(研究期間:2023~2025年度、②革新コア技術実用化タイプ)
<目的>
水稲の収穫作業に関して、担い手の生産規模の急拡大に伴い、コンバイン1台当たりの作業負担面積が増加傾向にあるが、収穫作業は夜露等の付着がない時間帯に限定される。1日の作業時間は6時間程度になっているため、慣行の収穫作業体系のままで大面積に対応するには、コンバインの台数を増やす、あるいは上位機種に切り替える等の対応策が挙げられるが、規模拡大のメリットを十分に享受できない。
また、近年の気候変動により頻発する台風や長雨の影響が懸念される中、適期収穫作業を行うためには、本格的な降雨前や降雨後の高水分水稲を収穫せざるを得ず、コンバインの脱穀選別損失(排塵口損失)の著しい増加が問題となっている。
そこで、夜露等が付着した高水分水稲を収穫する場合においても脱穀選別損失の増加を抑制して作業できる高湿材適応コンバインを開発し、1日当たりの作業可能面積を拡大する。
(3)土塊・石礫除去装置付きポテトハーベスタの開発
(研究期間:2023~2025年度、③次世代革新基盤技術タイプ)
<目的>
北海道のバレイショ収穫量は、全国の約8割を占める。近年、加工・業務用の需要が高まっているが、収穫時期の作業競合と労働力不足のため、北海道におけるバレイショの作付面積は減少傾向にある。バレイショの収穫には、ポテトハーベスタが利用されているが、ハーベスタの機上選別要員は通常4人。このうち2人が病害、緑化、腐敗、異形等の塊茎を除去し、残余の要員は土塊・石礫等の除去にあたるが、要員確保がままならず、収穫速度が制限されるため、収穫作業の高能率化及び作付面積の拡大が困難となっている。
このため、機上選別要員の半減を目指し、コンベア部分に土塊や石礫を除去する装置を搭載したポテトハーベスタを開発する。
(4)ほ場栽培データと乾燥調製データを統合したデータ駆動型水稲作の実証
(研究期間:2023~2025年度、④新技術導入効果実証タイプ)
<目的>
水稲作ではスマート技術の普及等により、生育情報や収量、品質等の各種データを作業と同時に取得・蓄積する先進的な取組が増えている。一方、栽培管理における生産者の意思決定の材料となり得るようなデータの特定や活用は十分に行われていない。データ駆動型の水稲作の普及を進めるには、生産者の意思決定支援に資するデータの種類や活用方法を特定するとともに、機械・機器や生産者の規模等に依存しないデータの取得や蓄積、各種データを紐づけて見える化する既存システムの機能改善や標準化、不足するデータの効率的かつ汎用的な取得技術の開発等を行う必要がある。
このため、ほ場で得られた栽培データとスマートライスセンター等で得られた乾燥調製データを基に、収量や品質が低いほ場を特定して要因を分析し、その改善に向けた生産者の意思決定を支援する手法を構築する。
(5)農作業安全を考慮した基盤整備事業におけるリスク低減効果の実証
(研究期間:2023~2026年度、④新技術導入効果実証タイプ)
<目的>
農作業事故では、作業環境に関する要因が含まれる事例も多く確認されている。農業生産基盤整備において、ほ場進入路や通路の勾配等を設計基準に適合させて施工した場合でも、用いられる農業機械の機種によっては安全性確保が不十分となる可能性がある。さらに、竣工後の耕作作業等に伴う経年変化が農業機械による作業の安全性を損なうことがある。
このため、基盤整備事業において、実施設計中のモデル地区を設定。農作業安全・農業土木の労働安全の専門家が基盤整備事業の実施設計に際して、当該地区の受益者との協議の上、農作業安全に関する思想を実施設計に盛り込むことで、事故発生リスクの低減及び農作業効率化に貢献する。
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日