大気圧プラズマ処理で植物のゲノム編集に成功 品種改良の新しいツールとして期待 農研機構2023年5月18日
農研機構は、千葉大学、東京工業大学と共同で、大気圧プラズマの短時間照射により、ゲノム編集に必要な酵素を植物細胞に導入する新しい技術を開発した。これまでの一般的なゲノム編集技術では外来DNAの導入が必要だったが、同技術では外来DNAの除去が不要となるため、より簡便にさまざまな植物に活用できると考えられ、品種改良の新しいツールとなることが期待される。
農研機構の光原一朗グループ長、千葉大学の柳川由紀特任研究員および東京工業大学の沖野晃俊准教授らの研究グループは、約25℃に低温制御した大気圧プラズマを照射することで、植物細胞にゲノム編集酵素(Cas9タンパク質とsgRNAの複合体)を導入し、植物をゲノム編集する技術を開発した。
従来、植物のゲノム編集では、一時的に遺伝子組換え技術を用いて、酵素の遺伝子をDNAの形で導入していた。この技術ではゲノム編集を行った後、導入したゲノム編集酵素遺伝子は不要となるため、自家受粉や交配などにより次世代の植物を取得するなどの方法で、外来DNAを取り除く必要があった。
今回開発した技術は、2017年に農研機構と東京工業大学で開発した、大気圧プラズマの照射により植物体に生体高分子を導入する技術を応用し、植物細胞にゲノム編集酵素(タンパク質-RNA複合体型)を導入したもの。この技術では、ゲノム編集酵素は遺伝子(DNA)の形で導入されず、タンパク質やRNAの形で植物細胞に直接導入されるため、これまでの一般的なゲノム編集技術で必要だった外来遺伝子の除去が不要となる。
また、パーティクルガン法やエレクトロポレーション法といった技術に比べ、植物体の形を保ったままプラズマ照射した植物組織の細胞集団に広く酵素を導入できる利点があり、植物のゲノムをより効率的に改変することが可能となる。
同技術は、ライフサイクルの長い樹木や栄養繁殖性の作物など、これまでゲノム編集が困難だった植物における品種開発の新しいツールとして活用されることが期待される。
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