宇宙園芸研究センター開所式 宇宙での食料生産研究を 千葉大2023年5月18日
千葉大は5月17日、宇宙・月居住のための植物生産システムの研究・開発を目的とした「宇宙園芸研究センター」の開所式と記念シンポジウムを、千葉県松戸市内のキャンパスで行った。中山俊憲学長は「目覚ましく発展が期待される有人宇宙活動に対応すべく、宇宙における食料の生産、供給をめざしセンターを設置した。若手の研究力を引き出し、新たな産官学連携に取り組みたい」とあいさつした。
センターの開所式に臨んだ中山俊憲学長(中央)、高橋秀幸センター長(左)、松岡延浩院長
センターが設置されたのは今年1月。宇宙での食料生産に特化した研究機関は国内では例がなく、世界的にも珍しいという。宇宙実験や植物工場での実験を通て、重力や圧力が異なる環境で効率よく成長し収穫できる品種開発をするとともに、宇宙では廃棄物処理が問題となるため、廃棄物を有効活用する循環型システムなどについて研究していく。月面の植物工場を想定した品種開発は、例えば乾燥地帯に強い品種など、地上での農業に展開できるという。
センターは3部門制で、宇宙などの特殊環境で生育する品種の開発などをする「宇宙園芸育種研究部門」、植物工場での実験を中心に低重力・低圧環境下での植物の高効率生産技術を研究する「高効率生産技術研究部門」、資源循環システムの開発とモデル化を研究する「ゼロエミッション技術研究部門」が一体となって研究を進める。JAXA(宇宙航空研究開発機構)などとも連携し、若手研究者育成にも力を入れる。
千葉大大学院園芸学研究院の松岡延浩院長は、同センター設立の経緯に触れ「伝統に甘んじることなく園芸学部の将来を考えたときに、宇宙で行う園芸を目指すと、既存の園芸の考え方によらない発想が出てくるのではないかとの結論になり、センターの考え方が確立された」と話した。
小林鷹之・元内閣府特命相(科学技術・宇宙)はビデオメッセージを寄せ、「センターのアプローチは極めて特徴的で地球上の課題も解決すると思う。研究機関、スタートアップ企業とも連携し、宇宙産業を切り開いてもらいたい」と激励した。
式後、高橋秀幸センター長は報道陣の取材に応じ、「宇宙農業はあったが、宇宙園芸という言葉はなかった。食料生産だけでなく、宇宙空間での生活向上、宇宙ガーデニングなど、心理的な癒しの部分も研究対象に入る」とした上で、「宇宙園芸という学問は確立されていない。教科書を作成していくような気持ちで学問を開拓していきたい」と述べた。
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