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「動く遺伝子」植物のレジリエンスを高めている可能性が明らかに OIST×RIKEN2023年6月16日

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沖縄科学技術大学院大学(OIST)と理化学研究所(RIKEN)環境資源科学研究センターの共同研究チームは、トランスポゾン(通称:動く遺伝子)が、植物のストレスや環境変化への適応を助けている可能性について明らかにした。研究論文は、科学誌『Nature Communications』に6月5日に掲載された。

OIST植物エピジェネティクスユニットの研究チーム。左から佐瀨英俊教授、レオナルド・フルチ博士、ジェレミー・ベトリエ博士、ムニサ・サディコバさんOIST植物エピジェネティクスユニットの研究チーム。
左から佐瀨英俊教授、レオナルド・フルチ博士、ジェレミー・ベトリエ博士、ムニサ・サディコバさん

同研究グループが、RNAダイレクトシークエンシングという直接RNA分子を検出する技術を用いてシロイヌナズナを解析したところ、通常の遺伝子とトランスポゾンが組み合わさったハイブリッド遺伝子が数千個もあり、高温や病原菌などの環境ストレスに応じてトランスポゾンの発現量が変化していることが分かった。この研究成果は、ストレスの多い環境に適応できる新しい作物の開発に役立つ可能性がある。

遺伝子発現の制御(細胞がどの遺伝子を活性化させるかを制御すること)は生物が適切に機能するために不可欠。遺伝子が発現することで、DNAの遺伝情報がRNA転写産物に変換され、適切なタイミングと場所でタンパク質などを作り出すことを可能にする。

一方で、動植物は遺伝子制御機構をトランスポゾンの活性を抑制するためにも用いている。同研究の筆頭著者であるOIST植物エピジェネティクスユニットの博士研究員、ジェレミー・ベトリエ博士は、DNAの一部であるトランスポゾンが遺伝子に入り込むと、有害な突然変異が起きる可能性があると話す。

しかし、今回の研究では、シロイヌナズナに通常の遺伝子とトランスポゾンが組み合わさったハイブリッド型のRNA転写産物が数千個も発現していることを発見。「遺伝子-トランスポゾン転写産物」と呼ばれるハイブリッドRNA分子は、トランスポゾンが遺伝子の近くや中に移動することで、遺伝子と合わさって発現したもの。研究チームは、長いRNA配列を読み取ることができる最先端のダイレクトRNAシークエンシングという手法を用いて遺伝子-トランスポゾン転写産物を読み取り、今回新たに開発されたParasiTEという計算ツールを用いて、トランスポゾンが遺伝子に与えた影響に基づき各転写産物を分類した。

次に研究チームは、環境ストレスによって遺伝子-トランスポゾン転写産物にどのような影響が出るかを系統的に調べた。その結果、ONSENというトランスポゾンが高温に反応し、関連遺伝子GER5の発現量を変化させていることが明らかになった。

さらに、病原体の感染に対するシロイヌナズナの抵抗力を助けるタンパク質を生成するRPP4という遺伝子に関する発見もあり、RPP4遺伝子の遺伝子-トランスポゾン転写産物の発現を抑制すると、シロイヌナズナの病原体に対する抵抗力に影響を与えることが判明。このことから、遺伝子-トランスポゾン転写産物は、植物が環境ストレスや環境条件の変化に適応するのを助ける可能性が示唆された。

ベトリエ博士は、「端的に説明すると、トランスポゾンは、DNA配列を変えたり、その発現量や安定性を調節したりと複雑な方法で遺伝子を制御することが分かった。この発見は、植物の生命活動や極端な温度の変化や病原体などの環境条件の変化に対する植物の順応性において非常に重要」と説明。さらに今回の研究成果は、ストレスに強い作物の開発にも役立つ可能性もあると期待される。

同本研究論文の責任著者でOIST植物エピジェネティクスユニットの佐瀨英俊教授は「今後、他の重要な作物種も対象に研究を行うことができる」と話している。

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