【特殊報】ビワにビワキジラミ 県内で初めて発生を確認 奈良県2023年7月13日
奈良県病害虫防除所は、ビワにビワキジラミの発生を県内で初めて確認。これを受けて、7月11日に令和5年度病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
多発生樹でのすす病(写真提供:奈良県病害虫防除所)
6月に奈良県南和地域のビワ園地で果実および葉にすす症状(写真1)が発生し、キジラミ類と思われる成虫および幼虫の寄生が確認された。成虫を採集し、農林水産省神戸植物防疫所に同定を依頼したところ、奈良県で未発生のビワキジラミと同定された。
同種は、国内では2012年に徳島県での発生が初めて報告され、その後、香川県、兵庫県、和歌山県、岡山県、愛媛県、大阪府、京都府および高知県から発生予察特殊報が発表されている。
ビワキジラミ成虫(写真提供:奈良県病害虫防除所)
同種はカメムシ目の昆虫で、寄生できるのはビワのみ。成虫の体長は2.5~3.5ミリ程度で、2対の翅があり、小さなセミのように見える。体は黄褐色~暗褐色で、白色の線状やまだら状の多数の斑紋があり、前翅は透明で、その外縁に沿って黄褐色の不明瞭な小斑紋が4~5つ並んでいる。幼虫の全長は2ミリ程度で、扁平な楕円形。自由に歩くことはできるが、動きは緩やか。
ビワキジラミ幼虫(写真提供:奈良県病害虫防除所)
同種はビワ樹上で年間に5回程度世代を繰り返すとみられる。春先に花や幼果、新芽で増殖し、果実が肥大する5~6月ごろに多発生。その後、徐々に密度が低下し、7月中旬~8月の盛夏には樹冠内部の日陰に隠れて休眠状態に入り、枝先の葉上にはほとんど見られなくなる。9月以降、花蕾形成が始まると再び活動を始め、枝先に集まって交尾し、花蕾に産卵。産卵された世代は11月ごろに羽化し、初夏に次いで発生密度が高くなる。冬期も低密度で花房や幼果に寄生し、春に再び増殖する。
幼虫・成虫ともにビワの樹液を吸汁し、特に幼虫は、吸汁した樹液を濃縮して、甘露と呼ばれる排泄物を排出。甘露には糖が多く含まれるため、これが付着した葉や果実は糸状菌(カビ)が発生して「すす病」となり、黒く汚損される。また、ビワでは春に袋かけが行われるが、同種はその時点ですでに花房や幼果の隙間に寄生しているため、袋かけだけで被害を防ぐことはできない。
袋かけした果実の被害(写真提供:奈良県病害虫防除所)
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇樹を観察し、3月以降の果実のすす病および5~6月の葉裏の成虫を目印に同種の早期発見に努める。成虫は黄色に誘引されるため、侵入が警戒される地域では黄色粘着トラップによるモニタリングが有効。
〇薬剤防除は、11月以降の摘蕾後と3月の袋かけ前に実施。また、収穫時に果実被害が確認された園では、収穫後から7月中旬ごろにも薬剤防除を実施する。
〇幼虫は花房の奥深くや狭い隙間に潜んでいるため、薬液が十分にかかるよう、摘蕾・摘果後の花房・果房に十分な隙間ができた状態で樹全体に丁寧に散布する。また、葉の表面を覆う微毛が薬液をはじくため、薬液には展着剤(まくぴか、アプローチBI、スカッシュなど)を加用する。
〇苗木を購入した場合には、定植前に防除を実施し、園内への持ち込みを防止する。
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