水稲施肥技術「リン浸漬処理」は冠水害の回避にも有効 国際農研2023年7月25日
国際農研は、マダガスカル国立農村開発応用研究センター(FOFIFA)とアンタナナリボ大学放射線研究所との共同研究により、水稲施肥技術「リン浸漬処理(P-dipping)」の効果を、マダガスカルの気象や地形条件が異なる農家圃場で検証。同技術が肥料の利用効率を大幅に改善するだけでなく、生育初期に生じる冠水害の回避にも有効であることを明らかにした。
国際的な肥料価格の高騰や気候変動に伴う極端気象の頻発化は、マダガスカルをはじめ、購買力が低く、生産基盤が脆弱な貧困農家の農業生産をより困難にしている。
同研究では、気象や地形条件が異なる18地点の試験圃場を選定し、移植日や窒素施肥などの栽培管理法を変えることで、P-dippingの標準的な効果や、同技術の効果が高い栽培環境を解明することを目指した。
図1.Pdippingにより得られる水稲の増収効果
P-dippingを施すことで、18地点の農家圃場におけるヘクタール当たりの平均籾収量は、リン肥料なしと比べて1.1トン、同量のリン肥料を従来の表層施肥で与えた場合に比べて0.5トン増加した(図1左)。さらに、窒素施肥と組み合わせることで収量差は大きくなり、窒素の利用効率も改善することが分かった(図1右)。
図2.P-dippingによる冠水害の回避効果
P-dippingは、初期生育を促すことで、移植後の水位上昇に伴う冠水害を回避し、稲株の枯死率を軽減することが分かった(図2左の写真)。その結果、冠水害を受けた圃場では、P-dippingによる増収効果(リン肥料なしとの収量差)が大きくなった(図2右のグラフ)。
これまでの知見と同様に、P-dippingは、移植から収穫までの日数を短縮することで、生育後半の気温低下に伴う低温ストレスを回避し、登熟度を改善することが分かった(図3左の写真)。その結果、標高の高い冷涼な地点だけでなく、温暖な地点でも移植日が遅い場合には、P-dippingによる増収効果が大きくなることが示された(図3右のグラフ)。
図3.P-dippingによる低温ストレスの回避効果
今回得られた成果は、P-dippingを採用することで、肥料の利用効率を高め、頻発化している冠水害の対処にもつながる可能性を示した。同技術を普及拡大することで、サブサハラアフリカでの安定的かつ持続的なイネ生産に貢献することが期待される。
同研究成果は7月20日、国際科学専門誌『EuropeanJournalofAgronomy』オンライン版に掲載された。
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