【特殊報】にんじんにホモノハダニ 県内で初めて確認 兵庫県2023年7月25日
兵庫県病害虫防除所は、にんじんにホモノハダニの発生を県内で初めて確認。これを受けて、7月25日に令和5年度病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
写真1:畝中央部の株が黄化した様子。トンネル被覆除去後(左)、
写真2:畝中央部の株の生育が停止した様子。トンネル被覆除去後(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
3月下旬、兵庫県西部のトンネル栽培にんじんで、畝中央部の株が黄化する症状が認められ(写真1、)黄化が進んだ株では生育阻害が認められた(写真2)。症状が見られた株には、赤褐色のハダニ類が多数寄生しており、葉にはその吸汁痕と思われる症状も認められた(写真3)。採集したハダニ類の成虫を同所で同定したところ、兵庫県のにんじんでは未確認のホモノハダニ(Petrobialatens Müller)であることが判明した。
写真3:ホモノハダニによる吸汁痕、写真4:ホモノハダニ雌成虫(背面)(写真提供:兵庫県県病害虫防除所)
ホモノハダニは世界各地に分布しており、国内でも麦類、イネ科牧草、豆類、イチゴ、ネギ等で発生が報告されているが、重大な被害をもたらすことはほとんどない。にんじん(徳島県、茨城県)やラッキョウ(徳島県)では、被害の発生事例が報告されている。
雌成虫は体長約0.7ミリで、体色は濃褐色濃赤色。背面から見ると楕円形で、側面から見ると背が盛り上がっている。カンザワハダニや赤色型ナミハダニと類似するが、第1脚が突出して長いのが特徴。
写真5:ホモノハダニ雌成虫(側面)※第1脚が突出して長い(矢印)(左)、
写真6:残渣に産下された卵。約0.1mm(写真提供:兵庫県県病害虫防除所)
気温が上昇する晩春~初夏にかけて産下された卵は白色の膜に包まれた休眠卵となり、越夏し、気温が下がり始める初秋から孵化し始める。秋から翌春にかけての低温期には、赤色の非休眠卵(写真6)を産み、世代を重ねて密度を増加させる。産卵は地表面の土塊、植物残渣、トンネル支柱の資材等の表面で行われる。成虫は冷涼時でも動きが活発で、植物体や地表面をすばやく動き回る様子が観察される。
被害として、にんじんでは、植物体の茎葉部が吸汁されることで、白く抜けたカスリ状の吸汁痕(写真3)ができる。多数の個体に吸汁されると植物体は黄化し、生育が阻害される。さらに、症状が進むと地上部が枯死する。トンネル栽培では、本種にとって好適な温湿度条件となりやすい畝中央の条で発生が多く、畝端の条での被害は比較的少ない。田畑輪換を行っている圃場では発生が少ないが、畑地状態が続く圃場では被害が出やすくなる
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇にんじんで登録のある殺虫剤を散布する(令和5年6月現在はアファーム乳剤のみ)。野菜類でハダニ類に登録のある気門封鎖剤は、薬液が虫体に確実に付着するよう留意しなくてはならないが、発生初期に散布することで防除効果が得られた事例もある。
〇夏季には土中で休眠卵として越夏しているため、発生が多かった圃場を水田化すれば、卵を死滅させることができる。
〇産卵は地表面の土塊やトンネル支柱の資材等の表面等で行われる。産下された卵の移動による発生の拡大を防ぐため、トラクター等の農業機械やトンネル支柱の資材等は、十分に洗浄するよう心がける。
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