クマバチから補酵素NADの合成能を欠損する自力では生育できない乳酸菌を発見 東京農業大学ら2023年8月2日
東京農業大学大学院分子微生物学専攻資源生物工学研究室を中心とする研究チームは、クマバチから生命代謝に必須の補酵素NADの合成遺伝子を特異的に欠損する、自力では生育できない微生物(乳酸菌)の発見・培養に世界で初めて成功した。
同研究チームは、花と花を訪花する昆虫に共通して生息する嫌気微生物の研究を進めていた。今回、クマバチ属には同じ花を訪れるミツバチやマルハナバチとは、分子系統が顕著に異なるコア腸内細菌群が存在することを発見し、2016年から7年間の調査を行った。
日本のクマバチ(本州:キムネクマバチ、タイワンタケクマバチ、 沖縄:オキナワクマバチ)
クマバチはミツバチと同じように花を訪花する花粉媒介昆虫だが、集団で社会生活を営む真社会性昆虫のミツバチとは異なる。クマバチは木や竹に穴を開けた巣の中で、単独または少数の雌バチが子育てをする亜社会性昆虫の仲間。当時、大学院生だった森達則氏、小澤芳里氏、山本安里沙氏らを中心として、日本各地のクマバチを採取しその腸内細菌解析を進めた結果、その多くが培養困難な難培養性の微生物で構成されていることが判明した。そして無酸素培養や微生物培養液を培地に添加することで、一部の嫌気微生物の単離に成功した。
クマバチ属の腸内細菌叢とミツバチ腸内細菌叢を構成する細菌種の分布(メタ16S rRNA遺伝子解析)
単離に成功した微生物の全ゲノム解析を行った結果、既知の微生物では報告例の無い、生命代謝に必須の補酵素NADの合成遺伝子を特異的に欠損する自力では生育できない微生物であることが判明した。同じ花を訪花するミツバチの腸内細菌叢と比較解析をしたところ、クマバチに共生する腸内細菌種は分子系統が顕著に異なることから、クマバチ属は太古の昔から独自の腸内細菌叢を維持し、子孫に伝播・保持してきたクマバチ属固有の生態系の存在が明らかとなった。
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