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植物成長促進ホルモンの新たな活性化経路を発見 イネなど作物の収穫向上への応用に期待2023年8月29日

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名古屋大学大学院生命農学研究科の榊原均教授、小嶋美紀子博士後期課程学生(社会人コース)、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの保浦徳昇特任准教らの研究グループは、理化学研究所環境資源科学研究センター(CSRS)の岩瀬哲上級研究員、農研機構の矢野昌裕シニアエグゼクティブリサーチャー、岡山大学資源植物科学研究所の山本敏央教授との共同研究で、植物成長促進ホルモンの1つサイトカイニンの新たな活性化経路を発見した。この結果は、イネをはじめ作物の収穫向上への応用に期待できる。

サイトカイニンは窒素栄養に応じた植物成長促進やイネの穂形成など、植物生産に関わる非常に重要な植物ホルモン。これまでその生合成は細胞内で行われると考えられてきたが、同研究で、同定したサイトカイニン活性化酵素タンパク質CPN1が葉の細胞壁空間(アポプラスト)に存在し、細胞内とは別の代謝経路により、根から輸送されてくる前駆体を活性型に変換していることを明らかにした。

図1:ササニシキ×ハバタキのCSSL におけるサイトカイニンリボシド派生体(cZROG)内生濃度に影響を与えるQTL ピークの検出図1:ササニシキ×ハバタキのCSSL における
サイトカイニンリボシド派生体(cZROG)内生濃度に影響を与えるQTL ピークの検出

同研究では、ササニシキとハバタキという性質の異なる品種を交配して作成された、染色体断片置換系統群(CSSLs)の幼苗を用いて主要な植物ホルモンの内生量の網羅的解析をしたところ、サイトカイニンのリボシド派生体の濃度に強い影響を与えるQTLが第5染色体上に検出された(図1)。そこで、このQTLの原因遺伝子の絞り込みを行ったところ、その原因遺伝子は酵素をコードしており、その構造はプリン代謝に関わるリボシダーゼに類似していることが分かった。

次に、この遺伝子にコードされるタンパク質を、大腸菌を利用して大量調製し酵素的性質を調べたところ、サイトカイニンのリボシド前駆体からリボースを外し、活性型に変換する活性を持つことが明らかになった。そこでこの遺伝子をCPN1(cytokinin purineriboside nucleosidase1)と名づけた。

図2:サイトカイニン生合成経路図2:サイトカイニン生合成経路

サイトカイニンの生合成経路については榊原教授らの研究グループにより、LOGと呼ばれる酵素が活性化反応を担っていることが15年ほど前に明らかにされていたが、CPN1はそれとは異なる中間代謝化合物を基質にして活性型分子を作り出す酵素であることが分かった(図2)。また、CPN1の機能を失ったイネ変異体では、葉でのサイトカイニン情報伝達が正常に行われなくなり、穂のサイズも小さくなることが分かった。CPN1遺伝子の利用により、人為的にサイトカイニン作用を調節することが可能になることから、イネをはじめとした作物の収量向上への応用が期待される。

同研究成果は8月29日付アメリカ科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』オンライン版に掲載された。

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