さくらんぼ大玉生産技術で輸出拡大へ 山形県農業総合研究センターなどの成果を紹介 生研支援センター2023年9月5日
農林水産業や食品産業における新産業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供する生研支援センターは、山形県農業総合研究センター園芸農業研究所を代表機関とする研究グループによる、さくらんぼ「紅秀峰」の大玉(3Lサイズ)割合を高める栽培技術に研究成果を紹介している。
「紅秀峰」(提供:山形県農林水産部)
山形県は全国一のさくらんぼ産地で、さくらんぼは山形県の「顔」ともいえる農産物。海外でも日本産のさくらんぼは、甘味、食味や風味の良さと鮮やかな紅色の外観が高く評価されている。一方、大きさに関しては、主にアメリカ産の外国産が3Lサイズ(果実横径28mm以上)であるのに対し、日本産はL~2Lサイズ(同22~28mm未満:山形県青果物等標準出荷規格)が中心でやや見劣りがする。
そこで同研究グループは、外国産に負けない3Lサイズの「紅秀峰」を生産するための栽培技術を開発した。栽培のポイントは、慣行栽培(通常の栽培方法)に比べて、①土壌水分が多くなるよう、多めにかん水② 果実を成らせる枝は横向き~上向きのものを主体に整理し、花芽を間引き ③結実が判り次第、果実を多めに間引きし、成らせる数を少なめに調整 ④樹の勢いを強めに維持の4点。これらのポイントを押さえて栽培することにより、生産する果実における3Lサイズの割合が増える。
平成30年度に実施した実証試験では、「紅秀峰」の3Lサイズ果実の発生割合が通常の栽培方法で約16%だったのに対し、この栽培方法による3Lサイズの割合は約64%になった。さらに、輸出相手国の残留農薬基準をクリアできる農薬散布体系を確立し、同術を導入した場合の農業経営試算を行い、経営的なメリットも明らかにした。同研究グループでは、これらの成果を盛り込んだ「紅秀峰の生産者向け超大玉生産のための栽培技術体系マニュアル」を作成し、普及に努めている。
また、同研究グループは、台湾の消費者を対象に3Lサイズの「紅秀峰」に関するアンケート調査を実施。その結果、アメリカ産と比べて、味は「美味しい」と「やや美味しい」で約88%で、外観は「良い」と「やや良い」で約80%、大きさについては「ちょうど良い」が約70%だった。甘味と酸味のバランス、食感の良さ、外観の紅色が美しいこと等が高い評価につながっている。
山形県農業総合研究センター園芸農業研究所の工藤信研究主幹兼果樹部長は「本技術を多くの生産者に活用していただき、『紅秀峰』の高品質生産と輸出の拡大につながることを期待します」と話している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日
-
ふるさと納税でこどもたちに食・体験を届ける「こどもふるさと便」 IMPACT STARTUP SUMMIT 2025で紹介 ネッスー2025年10月17日