トウガラシ果実の香りを決める遺伝子を特定 新たな果実の品種育成に期待 近畿大学2023年9月6日
近畿大学大学院農学研究科の小枝壮太准教授、博士前期課程2年(当時)の野田朋那氏、蓮真海氏らの研究グループは、トウガラシの成分分析、分子生物学および生化学的解析を行い、果実のフルーティーでエキゾチックな香りに関与する遺伝子を特定した。この遺伝子に着目することで、今後、トウガラシ果実の香りを対象とした品種改良が進むと期待される。
トウガラシ
同研究では、annuum種およびchinense種の多数の辛味品種を使用。さらに、chinense種ではカプサイシノイド生合成に関わる3つの酵素、アシルトランスフェラーゼ(Pun1)、アミノトランスフェラーゼ(pAMT)、ケトアシル-ACPレダクターゼ(CaKR1)の遺伝子のいずれかが変異することで果実に辛味がなくなった非辛味品種を用いた。
非辛味品種は、同研究グループが長年かけて準備してきた独自性の高い研究材料で、用意した多数の品種について、果実が揮発している香り成分を調査したところ、annuum種と比べてchinense種の辛味品種の果実は、多量のエステル類を揮発していることが明らかになった。さらに、pAMTが変異した非辛味品種では辛味品種と同等のエステル類が揮発している一方、Pun1やCaKR1が変異した非辛味品種ではエステル類の揮発量が非常に少ないことが明らかになった。これにより、前駆体を共有するカプサイシノイド生合成経路とエステル生合成経路が、互いに大きく影響し合っていることが確認できた。
トウガラシ果実における香りと辛味成分の生合成は互いに影響する
次に、annuum種およびchinense種でエステル類の生合成が大きく異なる要因に迫るため、エステル類の揮発量に大きく影響すると考えられるAATとCXEに着目。トウガラシ果実で発現している遺伝子を網羅的に探索したところ、AAT1、AAT2、CXE1が単離できた。また、果実におけるエステルの揮発量との相関関係を調査したところ、果実におけるAAT1の発現量の違いで、エステル類の揮発量の大小を説明できることが明らかになった。
さらに、AAT1のタンパク質を大腸菌で人工的に合成し、前駆体であるアルコールとアシルCoAを与えたところ、エステル類が生合成されることを確認。これらのことから、AAT1が果実におけるエステル類の生合成において重要な役割を果たしていることが明らかになった。
同研究に関する論文は8月30日、植物学分野の国際学術誌『Plant Cell Reports(プラントセルレポーツ)』にオンライン掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】モモほ場で「モモ果実赤点病」県内で初めて確認 愛知県2024年12月27日
-
【特殊報】ブドウにシタベニハゴロモ 県内の果樹園地で初めて確認 富山県2024年12月27日
-
【注意報】かぼちゃにアブラムシ類 八重山地域で多発 沖縄県2024年12月27日
-
米輸入めぐるウルグアイ・ラウンド(UR)交渉 過度な秘密主義に閣僚も「恥」 1993年外交文書公開2024年12月27日
-
1月の野菜生育状況 さといも以外の価格 平年を上回る見込み 農水省2024年12月27日
-
(416)「温故知新」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月27日
-
東京23区の12月の消費者物価 生鮮食品の前年同月比は2桁増2024年12月27日
-
JA全農あきたがスマート農業研修会 農機・担い手合同は初2024年12月27日
-
【農協時論】石破新政権へ期待と懸念 地方創生自任し民主的な議論を 今尾和實・協同組合懇話会代表委員2024年12月27日
-
ブランドかんきつ「大将季」登場 銀座三越で「鹿児島の実り」開催 JA全農2024年12月27日
-
「鹿児島県産 和牛とお米のフェア」東京・大阪の飲食店舗で開催 JA全農2024年12月27日
-
【世界の食料・協同組合は今】化石補助金に対する問題意識(1)循環型社会 日本が先導を 農中総研・藤島義之氏2024年12月27日
-
【世界の食料・協同組合は今】化石補助金に対する問題意識(2)化石資源補助削減が急務に 農中総研・藤島義之氏2024年12月27日
-
【人事異動】日本農産工業(2025年4月1日付)2024年12月27日
-
TNFDを始める企業必見 農林中金・農中総研と共同セミナー開催 八千代エンジニヤリング2024年12月27日
-
「産直白書2024年版」刊行 記録的な猛暑で農業の難しさが顕著に 農業総研2024年12月27日
-
農林中金 医療メーカーのニプロとソーシャル・ローン契約 10団体とシンジケート団2024年12月27日
-
協同組合振興研究議員連盟に国会決議を要請 IYC全国実行委員会2024年12月27日
-
2025国際協同組合年全国実行委員会がSNSで情報発信2024年12月27日
-
インターナルカーボンプライシング導入 井関農機2024年12月27日