世界初 土壌中の根と根粒菌の相互作用をライブイメージング「リゾフレームシステム」開発 農研機構2023年9月6日
農研機構は、土壌中の植物の根と共生微生物の相互作用をライブイメージングする「Rhizosphere Frame System(リゾフレームシステム)」を開発。世界で初めて土壌中のマメ科植物の根と根粒菌が共生関係を築く過程を連続的に観察することに成功した。このシステムを用いてマメ科植物と根粒菌の相互作用の解明が進むことで、化学肥料の使用量低減や温室効果ガスの削減に向けた根粒菌の農業への効率的な利用技術の開発促進につながると期待される。
「リゾフレーム」を用いたダイズの栽培
根粒菌は、ダイズなどのマメ科植物の根に住み着いて共生関係を築き、大気中の窒素を固定して宿主植物に窒素栄養を供給したり、温室効果ガスである一酸化二窒素(N₂O)の発生や消去において重要な役割を担っている、農業上重要な土壌微生物のひとつ。マメ科植物と根粒菌の相互作用(根粒共生)の仕組みを理解し活用することは、化学肥料の使用量低減や農耕地から放出される温室効果ガスの削減など持続可能な農業の実現にとって重要と考えられる。しかし、根は土の中に隠れているため、根と、根粒菌などの土壌微生物の相互作用の過程をありのままに観察することは困難で、根と微生物の相互作用の仕組みを解明する妨げになっていた。
そこで農研機構は、根を土から掘り起こすことなく観察できる植物栽培装置「Rhizosphere Frame (RhizoFrame,リゾフレーム)」と、蛍光タンパク質を発現する根粒菌を組み合わせ、蛍光顕微鏡を用いて植物の根と根粒菌の相互作用を非破壊で観察できる「Rhizosphere Frame System(リゾフレームシステム)」を開発。また、このシステムを用いて、土の中で根と根粒菌が共生関係を築く過程を世界で初めてリアルタイムで観察することに成功した。
同システムを用いて、土と根と根粒菌の位置情報を保持したまま連続的に共生相互作用を捉えた研究を進めることで、根粒共生への理解が深まり、根粒共生の農業への効率的な利用技術の開発促進につながることが期待される。また、このシステムは、作物に感染する病原菌の感染過程の解析など他の植物-土壌微生物相互作用研究への応用も期待される。
同成果は7月4日、科学雑誌『Journal of Plant Research』で発表された。
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