植物の新たな干ばつストレス応答機構 国際農研など研究グループが発見2023年10月4日
国際農研、京都大学、名古屋大学、理化学研究所、東京大学および農研機構の研究チームは、葉のしおれが見られない程度の極めて初期の干ばつにおいて、植物体内のリン酸量が低下し、リン酸欠乏応答が起こることを世界で初めて発見した。
乾燥ストレスの初期段階にリン酸欠乏応答が生じることを実証
温度異常、塩害、病虫害などのさまざまな環境要因の中で、干ばつは作物生産に最も深刻なダメージを与える環境ストレス。枯れてしまうような目に見える干ばつによる被害だけでなく、葉がしおれない軽度の干ばつであっても、収量が半減するほどの甚大な被害をもたらす。しかし、「見えない干ばつ」に対して、実際の畑で植物がどのように応答しているかは、畑の環境が複雑に変化する上、十分な雨が降ると干ばつ試験ができないため、これまで解明されてこなかった。
そこで研究チームは、軽度の干ばつを人為的に安定して誘導するため、これまでの干ばつ研究では利用例がなかった「畝(うね)」を活用。水はけを良くすることを目的として畑の土を盛り上げる「畝」を利用した実験系を開発した。さらに、6年間の畑での実証試験を通して、毎年変わる環境条件下においても、畝により干ばつを安定して誘導することに成功した。
この実験系を用いた畑のダイズの網羅的解析から、これまでわかっていたアブシシン酸(ABA)の応答が起こる前の、葉がしおれないレベルの初期の干ばつにおいて、植物のリン酸量が低下し、リン酸欠乏応答が起こることを突き止めた。また、実験室におけるシロイヌナズナを用いた解析から、リン酸欠乏応答に関わる鍵遺伝子が、干ばつ初期の植物の生育に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
同研究の成果により、干ばつ初期の「見えない干ばつ」に対する植物の応答レベルを定量的に検知することが可能に。作物収量が干ばつによる影響を受ける前に、水分供給を最適化できる画期的な技術の開発への道が切り拓かれた。同研究における畝を用いた干ばつ実験系の開発と「見えない干ばつ」を捉える指標としてのリン酸欠乏応答の発見は、将来の食料安全保障の改善に貢献することが期待される。
同研究成果は8月19日、国際科学専門誌『Nature Communications』オンライン版に掲載された。
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