サツマイモ基腐病 対策技術の普及と新品種開発 農研機構2023年10月10日
農研機構は10月5日、九州・沖縄地方の農業生産基盤強化をテーマとしたセミナーを開催した。同地方をはじめ、全国で感染が拡大している「サツマイモ基腐病」に対する最新の対策技術と、抵抗性を持つ新品種の開発状況が報告された。
サツマイモ基腐病は、イモを植えた土の中で発生したカビによってイモが腐る病害。
地面近くの茎の根元が黒く変色し、葉には変色が見られない場合もあり、発見が難しいことに加え、発病した株から急速に他の株に蔓延し、収穫後も土壌に残ったカビが感染源となることから、防除が困難だ。
2018年に沖縄、鹿児島、宮崎県で初確認されて以降、被害が急速に広がり、今年は33都道府県で確認されている。
農林水産省や農研機構、JAは、これまでもほ場にサツマイモ基腐病菌を「持ち込まない」、「増やさない」、「残さない」の3つを基本とした対策を促してきた。今年は、感染地域は増えているものの、宮崎・鹿児島県以外の発生地域では初発で抑えることができている。
今回のセミナーでは、種イモへの伝染リスクを低減する「蒸熱処理」について、「設定温度を48度、処理時間100分」とすることで、種イモの萌芽率と菌の消毒を両立できることが報告された。技術者向けマニュアル「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策」に明記し、研修会などで周知を図っているという。
さらに、有機物を土壌に混ぜて密閉することで、一時的に土中を酸欠状態にして病原菌を死滅させる「土壌還元消毒技術」の実験も始めた。発病率が10%程度のほ場で、0.1%以下に抑制できる効果が認められ、エリアを拡大して検証を進めている。
また、でん粉原料用「こないしん」、焼酎・でん粉用「みちしずく」、青果用「べにひなた」と、各用途向けに抵抗性のある品種を開発し、これらへの切り替えを促してきた。しかし、沖縄県特産である加工用の紅いもについては開発が遅れていた。
そこで、沖縄県糸満市で育成した「糸系1」を新たに開発。現在の紅いも品種のなかでは最強レベルの抵抗性をそなえ、今年3月に品種登録出願、普及を進めている。
糸系1は、沖縄県中南部の土壌に適応することが確認されており、今後、同県北部の土壌にもあうように開発を進めていく。
病気に強いだけでなく、市場にマッチした品種開発も目指す。青果用イモ「べにひなた」は、食味が「ほくほく」、「ふかふか」としているが、現在の消費者は「ねっとり」、「しっとり」としたものを好む傾向にある。担当者は、今後はニーズに合う食味に、栽培のしやすさなども取り入れ、「一層の改良と普及を目指す」と話した。
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