AIを活用「ばれいしょ異常株検出支援システム」開発 農研機構2023年11月1日
農研機構は、種ばれいしょの安定供給を図る上で重要な工程である異常株の抜取り作業をAIで支援するシステムの開発に取り組んでいる。このシステムでは、病害感染により生じたモザイク症状や萎れ症状などを、動画をもとにAIが検出し、作業者に異常株の存在を知らせることで、これまで熟練者により時間をかけて判別していた作業の大幅な省力化が可能。作業の軽労化・技術継承により、日本の基幹作物であるばれいしょの種苗生産面積の回復や担い手不足解消へ貢献することが期待される。
抜取り作業風景(農研機構種苗管理センター)
種ばれいしょ生産は、高齢化などを背景に面積や生産者の減少が続いており、栽培技術の維持・継承や作業の軽労化が喫緊の課題となっている。特に病気に感染した異常株などを抜き取る作業は、健全な種ばれいしょ生産に不可欠な作業だが、罹病の有無を的確に判定できる経験者の不足や、広大なほ場から異常株を搬出する労力の確保が課題となっており、異常株の判定を技術的に支援しつつ軽労化を図る仕組みが求められている。
農研機構では、抜取り熟練作業者の知識や経験をもとに、異常株検出プログラムの開発と、これを搭載するほ場管理車両の改良を進めており、ソフト開発では、2023年度に「トヨシロ」モデルを開発し、対象品種を拡大するため「コナヒメ」「キタアカリ」モデルの作成に着手。また、ハード開発では、日照量を調整する日除けの装備や6畦を同時に撮影できるよう改良を施した。今後は、2024年度に、これらの検出モデルを搭載したほ場管理車両を種苗管理センターに試験導入したのち、2025年度には撮影、処理、出力システム等で構成される「異常株検出支援システム」の種ばれいしょ生産現場への導入を目指す。
異常株検出支援システムによる検出画像(モニター画面)※赤枠は、検出システムが異常と判定した箇所
このシステムは、北海道において生産量の多い「トヨシロ」「コナヒメ」「キタアカリ」が対象。ほ場で撮影した動画像に異常株が写っているか否かをその場でAIが判定し、音と画像によって異常株の存在を作業者に知らせる。また、抜取り株は車両に載せて運搬できるため、ほ場外への搬出に生じる負担軽減を図ることが可能。同システムで検出できるのは、黒あし病による矮小株や萎れ症状、ウイルス病によるモザイクやれん葉症状などを呈する株で、検出精度は目標値の83を達成している。
現在、このシステムを用いて、ほ場での準リアルタイム検出試験を実施しながら、対象品種の拡大や6畦同時検出を可能とするなど、より実装効果を高めるための改良を進めている。
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