ニホングリ栽培化の歴史 遺伝的解析から明らかに クリの栽培と選抜は縄文以前から 農研機構2023年12月25日
農研機構は岡山理科大学と秋田県立大学と共同で、ニホングリが九州、西日本、東北の3地方の野生グリと、栽培グリの4つのグループに遺伝的に分かれることを明らかにした。約2万年前に西日本と東北の野生グリと現在の栽培グリの祖先が同時期に分岐したことが推定され、古代からニホングリの栽培と人為的選抜が行われていた可能性が示唆された。同成果は、ニホングリの栽培化過程の解明に役立つとともに、クリ遺伝資源の有効な保存と多用な遺伝資源を利用したクリの品種育成につながると期待される。
兵庫県の野生グリ(シバグリ、左)と栽培品種「銀寄ぎんよせ(右)」
ニホングリは日本原産の果樹で、縄文時代の遺跡から多くの炭化した果実や木材が出土している。また、日本書紀や古事記、本朝食鑑などの古文献にも記載があり、有史以降も重要な食用作物だった。特に、大阪府、京都府、兵庫県にまたがる丹波地方において、江戸時代以降に品種や栽培技術が発展し全国に広まったとされるが、これまでにニホングリの栽培化の歴史を裏付ける科学的証拠は乏しく、その起源については謎が多く残されていた。
農研機構は今回、日本全国に分布する野生グリと品種化されている栽培グリの遺伝的関係をMIG-seq法を用いて解析。その結果、ニホングリは九州、西日本、東北の3地方の野生グリ、そして栽培グリという4つのグループに遺伝的に分類できることがわかった。これら4つのグループは、まず九州の野生グリのグループが約5万年前に分岐し、その後約2万年前に西日本地方、東北地方の野生グリ、栽培グリの3つのグループが同時期に分岐したことが示唆された。
これまで栽培グリは有史以降に丹波地方のシバグリ(野生グリ)から改良されたのが通説とされていたが、推定された分岐時期は縄文時代以前と古く、丹波地方も含めいずれの地域の野生グリからも遺伝的に離れていることが明らかになった。このことから、栽培グリは異なる地域からの持ち込みや複数の地域での人為的な選抜が行われるなど、複雑な栽培化過程を経ている可能性が示唆された。
同成果は、ニホングリの栽培化の歴史の解明につながるとともに、野生グリ遺伝資源の保存やクリの品種育成に貢献することが期待される。収集された野生グリは、九州から北海道までの各地域の気候に適応し、栽培グリが持っていない多様な遺伝子を有する。農研機構は、地域適応性や遺伝的多様性の拡大を目的として、これらの野生グリを品種育成の素材として利用している。
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