農産物茎葉の新たな活用法を創出 常温酸処理GrAASプロセスを開発 農研機構2024年1月29日
稲わらなど農作物茎葉は腐敗・変質しやすいため、長期的な炭素貯留を想定した低・脱炭素産業への利用が課題となっていたが、農研機構は、常温で酸処理することにより茎葉の繊維を解きほぐしやすくする新技術GrAASプロセスを開発。埼玉大学、東京大学と共同でこの現象を詳細に解析した。この手法を利用することで、茎葉を繊維・構造資材として利用しやすくするとともに、繊維の糖化性が向上し、バイオ燃料等などへの変換利用が可能となる。同技術により、農業から低・脱炭素産業の創出が期待される。
GrAASプロセスを中核工程とした草本茎葉の高度利用フローの概要図
気候変動の激化に伴い、低・脱炭素への取り組みなど対策の加速が求められている。この対策の一つとして、空気中の希薄なCO2を直接分離回収するDAC(Direct Air Capture)技術が注目されている。農林業は、光合成によって大気中CO2を回収して農作物や木材に変換するDAC技術とみなせるが、稲わらなどの農作物茎葉は短期間で腐敗・変質してしまうため、建材や紙などの長期使用により炭素を貯蔵する木材と比べ、低・脱炭素への貢献が限定的となる。
農研機構は、特殊な方法で常温酸処理することで、稲わら等の茎葉を繊維または糖化原料として利用しやすくなることを見出し、その方法をGrAAS(Grass Upcycling by Activated Acid into the Sugar Pool:活性化酸による草から備蓄糖へのアップサイクル)プロセスと名付け、埼玉大学および東京大学大学院農学生命科学研究科と共同でこの現象を詳細に解析した。
GrAASプロセスでは、活性を高めた塩酸を使い、液相または気相条件下で改質した茎葉粉末を粉砕することで、水中での分散性が高い懸濁物が得られる。また、この懸濁物を酵素糖化すると、対照試料の懸濁物よりも高い回収率で糖を回収できる。
今回開発したGrAASプロセスを用い、これまで十分利用されていなかった茎葉を繊維に変換すれば、紙、ボード、リグノセルロースナノファイバーなどの製造が効率化し、長期使用に適する炭素プールとして利用できる。また、この繊維を酵素糖化して糖を回収し、それをバイオ燃料やバイオプラスチック原料などに変換することで、低・脱炭素に貢献。さらに、「長期使用後に糖が回収できる」という特性をもつ茎葉由来の新素材は、「備蓄糖」として長期貯留が可能で、必要な時に燃料、飼料や食料などに変換できる。
今後は、GrAASプロセスの試験規模拡大、試作用試料提供、資材特性評価等を経て小規模製造技術実証を行い、技術の早期の社会実装を目指す。
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