食の窒素フットプリントで熱帯島嶼の窒素負荷削減効果の可視化に成功 国際農研2024年3月18日
国際農研は、農研機構との共同研究により、食の窒素フットプリントを活用し、熱帯・亜熱帯島嶼における有機資源利用促進と化学肥料削減による食料システムから、窒素負荷削減効果の可視化に成功した。
石垣島を事例とした食のフットプリントの計算フレームの概念
昨今の化学肥料や食料・飼料の価格変動は、世界中の農業に大きな打撃を与えており、特に、その多くを輸入に依存する熱帯・亜熱帯島嶼地域では、農家経営に深刻な影響がある。一方、島内の食料システム由来の様々な有機資源は、窒素などの栄養分を豊富に含むが、未利用のまま環境中への窒素負荷となる場合も多く、沿岸のサンゴ礁など海洋生態系へのダメージが懸念されている。
同研究では、農畜産業が盛んな亜熱帯島嶼である沖縄県石垣島を対象に、島外から持ち込まれた食料・飼料(外国から輸入および本土・離島から移入)と島外に持ち出された食料(輸出および移出)を含む島の食料システム全体から、窒素負荷の実態を把握。また、島内で発生する最大の有機資源である牛糞堆肥を農地で利用することで、みどりの食料システム戦略の数値目標「化学肥料使用量 30%低減」を達成するシナリオを検討した。
その結果、牛糞堆肥の 70%を農地で利用することにより、化学肥料の使用量を 30%低減しても作物生産用の窒素投入量を維持できること、その際には石垣島で発生する総窒素排出量(窒素負荷)を 18%削減できることが分かった。このように、食料システム由来の有機資源を農地で積極的に利用し、化学肥料を削減することは、農業生産性と環境保全の両立につながる。
今回適用した食の窒素フットプリントは、他の熱帯・亜熱帯島嶼地域への応用も可能。昨今の化学肥料価格変動への対応に必要な施策立案だけでなく、SDGsや、みどりの食料システム戦略への貢献が期待できる。
同研究成果は、『Environmental Research Letters』電子版(日本時間2023年7月11日に掲載された。)
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