ローズ精油を利用 トマトの害虫防御技術を開発 東京理科大学2024年3月22日
東京理科大学先進工学部生命システム工学科の有村源一郎教授らの研究グループは、ローズ精油で処理されたトマトの葉において、防御遺伝子であるPR1の発現量が増加し、潜在的な病害抵抗性を高めることを明らかにした。また、ローズ精油には害虫の捕食性天敵を誘引する効果もあることを見出した。
精油は、植物由来の芳香性成分を含む天然素材で、香水、化粧品、洗剤、薬剤、食品など、さまざまな分野で活用されている。農業分野では、害虫に対する忌避剤として使われている。精油に多く含まれるテルペノイドには植物の防御応答を活性化させる生理活性があるなど、農業分野へのさらなる応用が期待されている。そこで、同研究グループは精油に含まれるテルペノイドがトマト栽培に及ぼす影響を調査した。
同研究では、11種類の異なる精油溶液を鉢植えのトマト土壌に施用することにより、β-シトロネロールを豊富に含むローズ精油がトマトの葉の防御遺伝子PR1の活性化に重要な役割を果たすことを明らかにした。また、圃場での実験から、ローズ精油で土壌を処理すると、害虫による食害が54.5%にまで減少することを実証。ローズ精油処理によって、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)による葉の食害、ナミハダニ(Tetranychus urticae)による葉への産卵が大きく減少することも確認された。さらに、ローズ精油溶液はチリカブリダニ(Phytoseiulus persimilis)などの害虫の捕食性天敵を誘引する生理活性を有することが示唆された。なお、同研究では1×10 5倍希釈したローズ精油を利用したことから、低濃度での使用が可能であることも示された。
同研究成果をさらに発展させることにより、環境にやさしく農薬に過度に依存しない有機栽培システムの実現が期待される。
同研究成果は3月18日、国際学術誌『Journal of Agricultural and Food Chemistry』にオンライン掲載された。
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