【特殊報】大麦、秋まき小麦にクビアカクビホソハムシ 国内で初めて確認 北海道2024年6月11日
北海道病害虫防除所は、大麦、秋まき小麦にクビアカクビホソハムシを道内のほ場で初めて確認。これを受けて、6月10日に令和6年度病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
大麦での被害状況(提供:北海道立総合研究機構 原図)
北海道病害虫防除所によると、道内の大麦および秋まき小麦ほ場において、これまで国内で発生報告がなかったクビアカクビホソハムシの発生が確認された。同種はヨーロッパ、ロシア、西アジア、東アジア、北アフリカ、北アメリカなど北半球で広く発生が確認されている。
6月上旬に道内の大麦および秋まき小麦ほ場において、ほ場全体に止葉を中心としてかすり状の短い食痕が認められ、被害葉には体長が2~4ミリ、洋なし型、泥状の物質を背負った虫が確認された。横浜植物防疫所に同定を依頼した結果、2023年7月24日に国内未発生のクビアカクビホソハムシ(Oulemamelanopusmelanopus)であることが確認された。
同種はイネ科の穀類および牧草の重要害虫であり、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシ、チモシー、カナリーグラス、オーチャードグラス、ライグラスで発生が報告されている。ヨーロッパ、ロシア、中国、キプロス、イラン、トルコ、アルジェリア、カナリー諸島、マデイラ、モロッコ、チュニジア、アメリカ合衆国等に広く分布している。
成虫は、体長が4~6ミリで翅鞘は光沢のある青黒色。前胸、頸節及び腿節は赤色ないし赤褐色で頸節の先端部は黒色を呈す。触角は11節からなり、黒色。卵は長さ1ミリで光沢のある黄色で、孵化直前に褐色ないし黒色に変わる。幼虫は頭部など一部を除いて排泄物からなる半球状の物質で覆われ、虫体は成虫よりやや大きい。頭、脚部のキチン質化した部分は暗褐色ないし黒色で、それ以外の部分は黄色を呈する。
ヨーロッパ、アメリカでは年1化性で、成虫は9月頃から土塊の間隙や植物残渣の下に潜り越冬する。越冬後成熟した雌成虫は寄主植物の葉の表面に産卵。幼虫は5月中旬から6月下旬に出現し、幼虫期間のほとんどを排泄物を背負って過ごす。幼虫は4齢を経過した後に、土中に潜り蛹化する。6月下旬頃から新成虫が現れ、夏から秋にかけて葉を加害する。1世代を経過するのに約46日を要する。
クビアカクビホソハムシの成虫(提供:北海道立総合研究機構 原図)
成虫、幼虫ともムギ類などの葉を食害する。被害が甚大になると、植物体は灰色に変わり、枯死する。
ロシアでは本種による被害のために穀物生産量が25~50%減少したという報告がある。また、同種はcornlethalnecrosisの病原体であるmaizechloroticmottlevirus(MCMV)の媒介虫と言われている。なおMCMVについて国内での発生は報告されていない。
道内のムギ類では近縁のムギクビボソハムシ(ムギドロオイムシ)による食害が報告されている。両者の幼虫や加害様相は酷似しており、これらでの識別は難しい。
成虫ではクビアカクビホソハムシは胸部および脚が赤色ないし赤褐色を呈しているのに対し、ムギクビボソハムシはこれらの部位が青藍色から黒色であることから、識別が可能。なお、クビアカクビホソハムシ成虫は、水稲害虫であるイネクビボソハムシ(イネドロオイムシ)成虫と酷似するが、クビアカクビホソハムシが水稲を加害することや、イネクビボソハムシがムギ類を加害する事例は知られていない。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇同種の発生が疑われた場合は、速やかに最寄りの農業改良普及センター、農業試験場、病害虫防除所に連絡する。
〇現在、クビアカクビホソハムシに対する登録薬剤はない。植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、当面の間、別紙に記載された農薬の使用が可能。なお、薬剤散布にあたっては、最新の農薬登録情報を確認し、薬剤抵抗性の発達を防ぐため系統が異なる薬剤のローテーション散布を行う。
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