マスカット様の香り 芋焼酎の原料用さつまいも新品種 霧島酒造と開発 農研機構2024年6月28日
農研機構と霧島酒造は、芋焼酎の原料用品種「霧N81」の農業特性を向上させた新品種「霧N82」(旧系統名:九州204号)を育成した。「霧N82」を原料とした焼酎は、マスカット様の香りを主体とする、フルーティーな香味となり、「霧N81」製の焼酎よりも香り成分を多く含む。また、「霧N82」は、「霧N81」よりもでん粉歩留が高く多収で、サツマイモ基腐病に対して抵抗性があることから、原料の安定生産にも寄与する。
「霧N82」と「霧N81」のいも
焼酎原料用さつまいもの主力品種「コガネセンガン」を原料とした芋焼酎は、いもの風味や独特の甘味など酒質が高く評価され、絶大の人気を博している。一方で、焼酎の香味に対する消費者ニーズは多様化してきており、市場では「コガネセンガン」とは異なる香味を備えた焼酎も求められている。
紫肉のサツマイモを原料としたワインやヨーグルト様の香りのする焼酎、橙肉のサツマイモを原料としたトロピカルフルーツ的な香りのする焼酎など、特徴的な香味を有する焼酎は新たな需要の開拓に貢献している。
そこで、農研機構と霧島酒造は、同社が独自開発したマスカット様の香りを特徴とする焼酎の原料用品種「霧N81」の酒質特徴を有しながら、収量性やでん粉歩留などの農業特性や醸造特性を向上させた品種の開発に取り組んだ。
今回、両者が共同開発した新品種「霧N82」を原料とすると、「霧N81」の焼酎と類似したリナロールを主体とするピュアなマスカット様の香りがする、フルーティーな香味の焼酎ができる。また、香り成分であるモノテルペンアルコール類が「霧N81」の焼酎よりも多く含まれているため、マスカット様の香りがより強く感じられる。さらに、「霧N82」のでん粉歩留は「霧N81」よりも高く、酸敗のリスクが低いため、冬季以外でも焼酎を造ることができる。
また、「霧N82」は「霧N81」よりも多収で、外観品質が優れ、サツマイモ基腐病に対して「霧N81」と同等のやや強の抵抗性があるなど、農業適性にも優れているため、原料の安定生産にもつながる。
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