葉の光合成速度の低コスト・低労力・高速推定法を開発 農研機構2024年7月17日
農研機構は、ガス交換測定を行わず、複数のセンシング技術を組み合わせることで光合成速度を推定する手法を開発した。この手法の活用により、光合成データを利用した育種・栽培研究の高速化や生育予測の高精度化が期待される。
図:光合成速度推定の概要
植物は光合成によって、太陽からの光エネルギーを化学エネルギーに変換し、成長や体の維持に必要な物質を作り出すため、農業においても、光合成は作物生産と密接に関係している。作物がどの程度光合成をしているのか光合成速度を知ることで、作物の健康状態や生産性を把握できるが、日本では光合成速度の情報を農業に利用している例は極めて少ない。
その要因として、光合成速度の評価には多くのコスト・労力・時間を要するため、データ取得に限界があることが挙げられる。例えば、光合成の研究において最も良く利用される市販のガス交換測定装置は高精度なガス分析計と高度な環境制御機能を内蔵しており、現在日本では非常に高価トラクターの最上位機相当。重量も約10kgと重く、ほ場内を移動しながら測定するには労力を要する。また、ガス交換測定装置内の環境と光合成速度が
安定するまでに数分から数十分の時間を要するため、大量のデータ取得には不向き。
そこで農研機構は、光合成生化学モデルと複数のセンシング技術クロロフィル蛍光、分光反射率、葉温、環境要素の計測を組み合わせ、ガス交換測定を行わずに葉の光合成速度を低コスト・低労力・高速で推定する手法を開発した(図)。
同手法にかかるコストは、すべての測器を合わせてもガス交換測定装置の1/5~1/10程度。さらに、同手法に必要なセンサは軽量化が進んでおり、すべてのセンサを合わせて1kg程度にすることも可能と考えられる。また、同手法に用いられるセンシング技術はすべて数秒以内に計測が完了するためとても高速で、葉に非接触で測定可能。近年発展が著しいリモートセンシング技術との相性も良いと考えられる。
今後、同手法をもとに、実用的な装置の開発や、さらに簡易な手法を開発することで、光合成の情報を用いた育種・栽培研究の高速化や生育予測の高精度化が可能になる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(169)食料・農業・農村基本計画(11)世界の食料輸出市場と主要輸出国の動向2025年11月22日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(86)無機化合物(求電子剤・銅)【防除学習帖】第325回2025年11月22日 -
農薬の正しい使い方(59)生態に合わせた害虫防除の考え方【今さら聞けない営農情報】第325回2025年11月22日 -
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 府内のミカン園などで初確認 京都府2025年11月21日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】経済統計は見方と使い方が肝要 国富の中の格差に目を2025年11月21日 -
農業法人「奥松農園くにさき」が破産 負債5.5億円 補助金事業の施設に海水侵入2025年11月21日 -
国産米重視が83.4%「2025年お米についてのアンケート調査」日本生協連2025年11月21日 -
シャインマスカット苗の「違法販売」防げ 注意喚起、商品削除...農水省とフリマ業者、対策に注力2025年11月21日 -
AI×アジャイルでアプリ開発 JAグループ若手が成果発表「Nexus Craft Lab 2025」2025年11月21日 -
(462)穀物が育んだ人類の知恵【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年11月21日 -
JA常陸「茨城県産 笠間の栗」予約販売中 JAタウン2025年11月21日 -
濃厚な甘さとフレッシュな果汁「国産温州みかんフェア」21日から開催 JA全農2025年11月21日 -
食べて知って東北応援「東北6県食材フェア」22日から開催 JA全農2025年11月21日 -
百名店監修みやぎ米レシピを提供 デリッシュキッチン・食べログとコラボ JAグループ宮城2025年11月21日 -
若手職員がキャリア自律を考える「3県合同キャリアワークショップ」開催 JA愛知信連2025年11月21日 -
JA三井リース ベイシア前橋みなみモール店のオンサイトPPA事業者として参画2025年11月21日 -
農林水産業の持続的発展へ金融・非金融で支援 サステナブル・ファイナンスは10兆円超 農林中金2025年11月21日 -
「乾田直播栽培技術標準作業手順書」新たな地域版6編を公開 農研機構2025年11月21日 -
「えひめ・まつやま産業まつり-すごいもの博 2025-」出展 井関農機2025年11月21日 -
半導体用プロセスケミカル企業AUECC社 買収に合意 住友化学2025年11月21日


































