トマトの免疫システムを回避する病原菌の変異メカニズムを解明 摂南大学2024年7月23日
ニュージーランドMassey大学のCarl H. Mesarich講師、Silvia de la Rosa博士、オランダWageningen大学のChristiaan R. Schol博士、Matthieu H.A.J. Joosten准教授、Yuling Bai教授、摂南大学農学部農業生産学科の飯田祐一郎准教授と農学専攻博士後期課程1年生の前田和弥大学院生らの研究グループは、世界中のトマト栽培で大きな問題となっているトマト葉かび病において、病原菌が自ら複数の遺伝子を変異させることで、トマトの持つ免疫システムを巧みに回避するシステムが存在することを発見した。
葉かび病菌に対する免疫システムを制御する抵抗性遺伝子Cf-9BとCf-9Cが導入されたトマト品種は世界中で利用されているが、近年はこれら品種において葉かび病が発病し、日本でも2003年にCf-9B/Cf-9C抵抗性を打破する葉かび病菌が発見されている。今回の研究成果から世界各地で同じ変異メカニズムが同時期に生じていたことが明らかとなった。この発見は、Cf-9B/Cf-9C抵抗性を持つ商業トマトにおいて本病害に対する防除効果が限定的であることを示しており、今後、より安定的な免疫システムを持つトマト品種の開発に向けた一歩となる。
トマト葉かび病菌は、トマトのビニールハウスやガラス温室などの施設内での栽培で発病が多い病原菌で、世界中で問題となっている。研究グループは長年、この病原菌がトマトの免疫システムを回避する変異メカニズムを、共同研究により解析してきた。抵抗性遺伝子Cf-9BとCf-9Cが導入されたトマト品種は世界中で栽培されているものの、各地でトマト葉かび病菌の発生が報告されていた。
今回の研究では、トマト葉かび病菌のゲノム情報の比較から、Cf-9B抵抗性を誘導するエフェクター遺伝子Avr9Bを同定し、これまでに同定されていたCf-9C抵抗性とAvr9Cとともに解析。その結果、欧州、日本、ニュージーランド、中国、タンザニアなど、世界中のトマト葉かび病菌において、同じ回避メカニズムが同時期に生じていたことが証明された。
近年、ヒトの病気に対する医薬において抗生物質の効かない耐性菌のまん延が問題となっているが、農業における農薬においても、化学農薬の効かない耐性菌が発達しており、病気の防除が難しくなっている。また、新たな化学農薬の開発は数百億円にのぼる莫大な開発コストとおよそ10年の開発期間が必要とされ、新たな耐性菌の出現によりすぐに使い物にならなくなるリスクも抱えている。
対応策として、耐性菌の発生を防ぐために、異なる作用機作の複数の化学農薬をローテーションで使ったり、生物農薬や、耐病性の高いトマト品種を栽培。トマト葉かび病菌は化学農薬に耐性を示す「耐性菌」の発達が問題となっており、抵抗性品種に依存した防除戦略が取られてきたが、同研究から病原菌は植物の免疫をも回避することが分かり、新たな防除戦略が求められる。
同研究の成果は6月24日、国際学術誌『New Phytologis(オンライン版)』に論文が掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
NTTグループの開発した農業用国産ドローンの取り扱い開始 井関農機2024年12月23日
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日