耐久性と美しい音色 カイコ新品種が生み出す「味線用絹絃」開発 農研機構2024年8月6日
丸三ハシモト株式会社と農研機構は、繭糸強度の高いカイコ品種「響明(きょうめい)」を使うことで、絹絃の課題だった耐久性の向上を実現し、かつ明るく澄んだ美しい音色を特徴とする三味線用絹絃の開発に成功した。今回開発した三味線用絹絃は、新製品「寿糸極上響明」として、2025年1月から、丸三ハシモトが販売する。
図1:響明の繭糸を使用した新製品「寿糸極上響明」
新製品の三味線用絹絃「寿糸極上響明」は、丸三ハシモトにおける三味線糸としては30年ぶりの新作となる。今回、販売するのは3本ある三味線の絃の中で最も細く、切れやすい三の糸(規格:13-3、14-3および15-3)で、今後、他の規格や琴絃など、ラインアップの拡大を予定している。
絹絃は化学繊維弦と大きく異なり、音色が繊細で余韻が綺麗だが、摩擦などにより演奏中に切れる頻度が高いことが難点だった。そこで、新製品では、農研機構が育成した高い繭糸強度と実用化に必要な生産性の両立が可能な新しいカイコ品種「響明」の繭糸を使うことで、絹絃の課題だった耐久性を向上させた。
図2:試作した撥絃試験機による耐久性試験の結果
響明を使用した新製品は既製品(寿糸極上)と比べ、破断までの撥絃回数が30%以上向上し(図2)、プロの演奏家による官能試験でも、耐久性が高いと評価された(図3)。加えて、新製品は毛羽立ちにくく、余韻と音量に優れるため(図3)、演奏会など、大きなホールでの演奏に適している。
図3:官能試験による使用感や音色の評価結果
また、音色の分析結果からも新製品の演奏音には豊かな高域成分が含まれており、音の膨らみがあることや、音色の輪郭がはっきりしたクリアーな音であることが示されている。
同研究は、(一財)大日本蚕糸会「貞明皇后蚕糸記念科学技術研究助成」の支援を受けて行われた。
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