ネムリユスリカ由来培養細胞 乾燥からの生命活動再開はトレハロース輸送体がカギ 農研機構2024年8月7日
農研機構を中心とした共同研究チームは、乾燥しても死なない昆虫ネムリユスリカから作られた培養細胞Pv11細胞について、トレハロース輸送体がネムリユスリカ由来培養細胞の乾燥からの生命活動再開の鍵であることを発見した。同成果は、通常では乾燥保存できない動物細胞を常温で長期間保存した後に生命活動の再開が可能になる技術の開発につながると期待される。
動物培養細胞は、医薬品の開発などに広く使われている。動物細胞を長期間保存するには、液体窒素を使って200℃近い超低温で細胞を凍結し、超低温を維持する方法が広く用いられるが、凍結状態を維持するには液体窒素の供給や超低温フリーザーへの電源供給を継続する必要があり、温度管理に多くのコストがかかる。
一方、生物のなかには、常温、乾燥状態で10年以上も生命活動(代謝や細胞増殖)を完全に停止していても、水を得ることで再び生命活動を再開できるものが存在する。このような生物は乾眠生物と呼ばれ、乾眠生物の多くは、乾燥保護物質であるトレハロースを体内に大量に蓄積する事によって乾燥のダメージから細胞を守っている。しかし、乾眠性を持たない動物細胞にトレハロースを蓄積させ、乾燥させただけでは、再水和後に代謝と増殖は再開せず、細胞が破裂してしまう。
そこで、農研機構を中心とした共同研究チームは、乾眠昆虫であるネムリユスリカ由来で乾燥からの生命活動再開能力を持つ培養細胞Pv11細胞を用い、再水和による生命活動再開のメカニズムの解明を進めてる。
同研究チームは、新たに発見したトレハロース輸送体STRT1が再水和時にトレハロースを効率よく細胞外へ排出することで、急激な浸透圧変化を抑え、水分の細胞内への流入による細胞の破裂を防ぐという重要な役割を果たしていることを、初めて明らかにした(図1)。
さらに研究を進め、乾眠メカニズムの全容が明らかとなれば、このしくみを利用して、動物細胞の生命活動を一時的に停止した状態で長期常温乾燥保存できる技術の開発につながることが期待される。
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日
-
「JPFA植物工場国際シンポジウム」9月1、2日に開催 植物工場研究会2025年4月2日