【特殊報】トマトにトマトキバガ 県内の農産物に初めて確認 愛知県2024年9月10日
愛知県農業総合試験場は、トマトにトマトキバガ:Tuta absoluta(Meyrick)を県内の農作物で初めて確認。これを受けて9月9日、令和6年度病害虫発生予察特殊報第2号を発表した。
愛知県農業総合試験場によると、9月3日に県内のトマト施設ほ場内で、表面のみを残した薄皮状の被害葉およびせん孔侵入した食害痕のある被害果実を確認。
食害部には、トマトキバガと疑われる幼虫が確認された。また、同日にフェロモントラップをほ場外に設置したところ、翌日(9月4日)に成虫が誘殺された。同環境基盤研究部病害虫防除室で同定を行った結果、トマトキバガであることを確認した。県内での農作物への被害は初確認。
トマトキバガは、2023年10月10日にフェロモントラップ調査に初誘殺(名古屋植物防疫所同定)が確認され、病害虫発生予察特殊報(令和5年10月23日付け)を発表。今年度は4月24日に初誘殺が確認されて以降、複数地点で誘殺が続いていた。
トマトキバガは、2021年11月に初めて熊本県で特殊報の発表後、沖縄県から北海道までの計42 道府県で誘殺または食害が確認されている(9月9日現在)。
成虫は、翅を閉じた静止時で体長5~7mm(前翅長約5mm、開張約10mm)。前翅は灰褐色の地色に黒色斑が散在し、後翅は一様に淡黒褐色。幼虫(写真1)は、終齢で約8mmとなる。体色は淡緑色~淡赤白色で、頭部は淡褐色。前胸の背面後方に細い黒色横帯がある。
写真1:トマトキバガ幼虫(提供:愛知県農業総合試験場)
1年に複数の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異ななり、年に10~12 世代発生する地域もある。卵~成虫になるまでの期間は24~38日程度だが、気温が低い時期はさらに延びる。成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。卵は、寄主植物の葉の裏面などに産み付けられる。幼虫は1齢から4齢までの生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。
被害としては、ナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。トマトでは、茎葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、孔道が形成。葉の食害部分は表面のみ残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる(写真2)。ハモグリバエ類では線的な食害痕となるのに対し、トマトキバガでは面的な食害痕となる。果実では、幼虫がせん孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に直径数ミリ程度の穴が空いて腐敗する(写真3)。
写真2:トマトキバガによる葉の食痕(提供:愛知県農業総合試験場)
写真3:トマトキバガによる果実被害(提供:愛知県農業総合試験場)
同所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇被害の特徴を把握し、ほ場内をよく見回り早期発見に努め、見つけ次第捕殺する。
〇ほ場で発生が認められた場合は、発生を拡大させないため、薬剤散布を行う(表)。薬剤散布にあたっては、最新の農薬登録情報を確認し、薬剤抵抗性の発達を防ぐため系統(IRACコード)が異なる薬剤でローテーション散布を行う。
〇収穫残渣、被害葉及び被害果実をほ場や露地に放置した場合、同虫が増殖する恐れがある。速やかに土中に深く埋却するか、ビニール袋で一定期間密閉し、寄生した成幼虫を全て死滅させたうえで、適切に処分する。
〇作終了時は、一定期間施設を密閉し、本虫を死滅させた後、残渣を運び出す。
〇施設栽培で防虫ネット未設置の場合は、コナジラミ類対策も兼ねてハウスの開口部に0.4mm目合いの防虫ネットを設置する。ネット等の破れやすき間は補修し、トマトキバガの施設内侵入を防ぐ。
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