みつ入りリンゴをゲノムから読み解く 選抜用DNA マーカーを開発 農研機構2024年9月19日
農研機構、千葉大学、青森県産業技術センターは共同で、大規模な遺伝解析と遺伝子発現解析により、リンゴ果実のみつ入りに関わる有力な原因遺伝子候補を絞り込み、みつの入りやすい個体を予測できるDNA マーカーを開発した。みつの入りやすい品種やみつの入らない品種を幼苗段階で効率的に選抜するのに役立つとともに、バラ科果樹の果実にみつが入るメカニズムの解明にもつながることが期待される。
リンゴ果実の「みつ」は、華やかな香りをもたらす要因で、多くの消費者においしい果実の目安とされている。一方、みつ入りリンゴを長期保存すると、みつ入り部分が褐変し、商品価値を失うこともある。
みつは、細胞間隙に糖の一種であるソルビトールが蓄積して組織が水浸状になることで発生すると考えられている。「ふじ」や「はるか」、「ぐんま名月」にはよく発生する一方、「王林」、「きおう」、「シナノゴールド」にはほぼ発生しないなど品種の要因が大きい現象だが、その発生には栽培法や天候、生育地など環境も影響することが知られている。
農研機構は、千葉大学、青森県産業技術センターりんご研究所と共同で、みつ入りとゲノム情報との関連を今までにない大規模な数の材料を用いて解析。みつの入る品種と入らない品種での遺伝子発現を比較することで、みつ入りの品種間差の原因となる有力な遺伝子候補を特定した。この遺伝子はSWEET と呼ばれる糖の輸送を担うタンパク質をコードしており、ソルビトールの蓄積に関与している可能性が示されている。
研究グループは得られた知見をもとに、みつの入りやすい個体を幼苗段階で予測できるDNA マーカーを開発。これを用いることで、収穫後早期の消費に適したみつの入りやすいリンゴ品種と、長期保存に適したみつの入らない品種のそれぞれを効率的に開発し、リンゴの周年供給の拡大に貢献することが可能となる。また、「みつ入り」は、リンゴと同じバラ科のニホンナシやモモでは食味などの品質が低下する「みつ症」として生産現場で問題視されるが、同成果を通してみつ入りのメカニズムが解明されれば、まだ原因が解明されていないこれらの「みつ症」の解決にもつながることが期待される。
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